脳を活性化する「ライフキネティック」の凄み ドイツ発祥の手法はアスリート以外も役立つ

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ドリブルやフェイントといった技術は、練習を積み重ねれば自然と上達し、視線も前に向くようになるとよく聞く。だが、必ずしもそうではない。逆にサッカーを始める頃から上体を上げる癖をつけることで、トップスピードでドリブルしながらでも、自然と周りを見ながらボールコントロールができるようになると深井氏は考える。

実際にライフキネティックを教えているジェフ千葉のスクールでも、そういったトレーニングを毎回取り入れた結果、選手たちのプレーはガラリと変わったという。ある日、指導している子どもの親が練習を見学に訪れた際、深井氏にこう話した。

「なんか最近、あの子、周りが見えるようになって、すごくプレーが変わりましたね」と、明らかにプレーが変化していたのだ。

(出所)ライフキネティックの科学的検証の一例より

ドイツのノイビーベルクにあるミュンヘン連邦軍大学では、2009年にギュンター・ペンカ教授のもと、ライフキネティックトレーニングの効果を30人の被験者(主にスポーツ学生)を対象に、平衡能力・目と手の協応・目と足の協応について検証。その結果、被験者の直立平衡感覚が改善されたと証明している。

目と手の協応と目と足の協応課題での処理速度は8.38%~11.32%増加し、課題が複雑になるほど改善されている。

ライフキネティック公認マスタートレーナーである中川慎司氏は、トレーニングによって視野が拡大する影響についてこう話す。

ライフキネティック公認マスタートレーナーである中川慎司氏(筆者撮影)

「視野の広さは、普通に生活していたら、どこからどこまで見えているのかを意識しないと思います。だから実際に視野が広がっても、すぐには気付かない。

でもトレーニングをする前と、ある程度の期間実施した後の視野の広さを調べると、何十センチも広がっている人も中にはいます。

自分でわかるようになると、“あぁ、視界が広がるとこんなに景色が違うんだな”って実感できるようになる。特に『目』に関しては結果が出やすいので、たくさんの方から反響をいただきますね」(中川氏)

深井氏も、実際にトレーニングを広めていくなかで、教え子のパフォーマンスが著しく向上する姿を何度も目の当たりにした。相手選手の動きを広い視野で知覚し、状況変化に瞬時に対応する。

そんな場面を見てきたからこそ、「日本サッカーが本当に世界一を目指すなら、個人的にでもいいから選手は取り入れるべき」だと深井氏は断言するのだ。

障がい者の行動範囲を広げ、生活そのものを変えていく

また、深井氏は、2018年6月にCPサッカー日本代表に対してライフキネティック教室を開いた。CPサッカーとは「脳性まひ者7人制サッカー」のことで、杖なしで、歩行・走行可能な肢体不自由者を対象とした競技。

東京パラリンピックの競技種目からは外れてしまったが、1984年よりパラリンピックの正式種目として採用されていた。

教室を開催したのはこの1度だけではあるが、深井氏は実際に指導するなかで、確かな手応えをつかんだ。

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