発売前「ネット全文公開」した本が売れたワケ 「すごい」と言われる企業ほど逆説的だ

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むしろ、アクセスは誰でもできるが、アクセスした情報の中で共感性の高い情報は人とシェアしたくなる。「私はこの本を買いました」と言いたくなることが大事なんだと思うんです。本棚に1冊置いてあるだけで、ほかの人が来たときに「あっ、これ買ったんだ」と共感を呼ぶことができる。

本が持つアクセス権は相対的に価値が下がっているけど、自分の価値観や思想を強化するための「自己紹介ツール」として価値を持たせられればと思ったんですね。

「2.0」という回りくどい言葉をつけた意味

──この本でいちばん訴えたかったことって何でしょう。

近藤哲朗(こんどう てつろう)/1987年生まれ。千葉大学大学院修了後、面白法人カヤック入社。2014年同社で出会った仲間と、社会課題解決を目的とした事業や組織を応援するそろそろを創業。一方で有志組織「ビジネス図解」研究所も運営、ビジネス図解のコンサルも行う(撮影:梅谷秀司)

読書全般にいえることですが、さらっと読んで終わりになっちゃう人が多いと思うんです。

この本で100の事例を紹介したのは、まず面白いビジネスモデルがあることを認識する。そこから図と文章を読み込んでいくことで、ビジネスモデルの仕組みを理解する。3つ目の段階として、ネット上でツールキットを提供しているので、自分自身で実際に図解をしてほしい。自分で作業を通して学ぶことが、やはりいちばん身になると思うんです。

本のタイトルに、「2.0」という回りくどい言葉をつけた意味は何か。これまでもビジネスモデルについて書かれた本は数限りなくあります。だけど、ビジネスモデルという言葉が使われた瞬間、それは「儲けの仕組み」と訳される。経済合理性をいかに仕組みで成り立たせるか、その視点は重要ですが、これからの時代、それだけでは足りないと思うんです。

──経済合理性だけではなぜ駄目なのでしょう。

実をいうと、僕自身がビジネスに対して苦手意識を持っていました。大学、大学院と建築を専攻していたこともあって、どっちかといえばクリエーティブに軸足を置いてきた。新卒でカヤックという会社に入った後、そこにいたメンバーと「そろそろ」という会社を立ち上げました。

会社を作って、クリエーティブが最も必要とされている領域は何だろうと考えたとき、社会(ソーシャル)課題の解決じゃないかと。ただ、社会課題って貧困や紛争、環境問題などものすごく深刻です。深刻な問題に深刻なアプローチをすると、さらに深刻になってしまう。物事を深刻なままに伝えるのではなく、クリエーティブの力で、ユーモアとか楽しい部分を加えて、ポジティブなメッセージとして伝えていくことができればと思ったんです。

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