岸本:下五の体言止めは「五月雨をあつめて早し最上川」など、芭蕉の句にも多く見られます。俳句らしい、安定感のある形です。次の句の下五を体言止めで埋めてみましょう。
お題 「踊髪よべのまゝなる○○○○○」
「踊」は盆踊りのことで秋(初秋)の季語です。「踊髪」は盆踊りのために結った髪、「よべ」は昨夜で、「踊髪よべのまゝなる」はとは、盆踊りの翌日、前の晩に盆踊りを踊ったときの髪型のままでいる、という意味です。
現代風に置き換えてみるともっと面白い
元の句は「踊髪よべのまゝなる選炭婦 房山」です。作者は筑前の人で1929(昭和4)年の作。選炭婦とは炭鉱で石炭の選別を行う婦人労働者で若い女性が多かったそうです。炭鉱の厳しい環境で働く女性が、年に一度の盆踊りを楽しみにしていたことが想像できます。
(解答問答)
岸本:昨夜の盆踊りのためにきれいに結った「踊髪」がそのまま朝になってしまったという場面を想像するのですが、下五は「朝の道」や「村娘」より、もっと飛躍ができるんじゃないかと思います。「熱帯魚」でも面白いかもしれませんね。季重なりだけど。
夏井:「踊髪よべのまゝなる熱帯魚」はすごい。
岸本:「熱帯魚」は夏の季語です。すると踊髪も盆踊りじゃなくて、クラブで踊ってたとかね。
夏井:下五に季語を入れない形のほうが、読んでいる人は納得ができると思うんです。まずは「踊髪」が季語ですから、今どきの情景で「踊髪」が「よべのまゝなる」何か。
岸本:「踊髪よべのまゝなる歌舞伎町」とか。
夏井:確かに、場所もありますね。
岸本:「踊髪よべのまゝなるおばあさん」もあるね。
夏井:老いらくの恋、すごい。「レディー・ガガ」もいけますね(笑)。
踊髪よべのまゝなる朝の道
踊髪よべのまゝなる村娘
いかがでしたでしょうか。ここに紹介した型は、基本中の基本。ぜひ、さまざまな俳句を作って、楽しんでみてください。
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