子どもの「英語力」をグッとあげる教材は何か それぞれ使い方にポイントがある

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お母さんは「内容が面白いようで何度も同じCDを聞いています。ギリシア神話なんて本では読まないけれど、CDを聞いて知ったということですね。『トム・ソーヤ』は夏にはまって、その中の英語のセリフを言っていましたね。それもとてもタイミングよく、その場に合った英語が口からでてきたので驚きました」と、Sくんが無理せず、楽しみながら英語を耳にしている様子を話してくれました。

何度も聞かないと発語することはできませんから、何度も聞くことのできる良質の教材を選ぶことは重要です。子どもだからといって「この程度でいい」のではなく、「子どもだからこそ良質のものを」と考えて、英語音声教材を選びたいものです。

Sくんのように聞いた英語が口から出ても、それを継続的な英語の学びにつなげるには、やはり聞いた英語をやり取りする場が必要でしょう。母語でも耳から聞いた言葉を使ってみて、相手が理解してくれて、言葉のやり取りが生まれるからこそ習得につながっていきます。やり取りをする相手も必要です。上記のような教材を通じて英語を覚えたからといって、街で見かけた外国人の方にいきなり話しかけられるかといえば、子どもの場合はそうはいきません。

目的を大人が明確にする必要がある

なので、学校の授業や英語教室など、日本人の子ども同士でやり取りができるような環境が必要になります。英語の教室に通う場合は、こうしたことが活発に実現できる教室を選びたいものです。

英語を学ぶ教材をみてきましたが、実際にどのような英語を子どもに身につけさせたいのかを、まずは大人が明確にする必要があります。「学校英語のテストでいい点数を取りたい」「入学試験で苦労しないようにしたい」「実際に英語を使ってコミュニケーションしたい」「将来仕事で使える英語を身につけたい」などと目的はさまざまでしょう。

しかし、これからの日本の子どもには、自主的に英語を学ぶ態度、長く学び続けられる実力や英語の知識だけでなく、異文化を理解する態度、人とコミュニケーションできる英語を身につけさせたいと思います。

「この方法で何年たったら英語が話せるようになります」といった宣伝文句は信用できません。人間によって言葉の学びには差があるのです。これからの未来を生きる子どもが英語を学ぶ「はじめの一歩」に、どのような教材を選んだらいいのか。大人はじっくりと検討する必要があります。

木原 竜平 ラボ教育センター 教育事業局長

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きはら りゅうへい / Ryuhei Kihara

1987年、筑波大学卒業、ラボ教育センター入社。東京、名古屋、大阪にて営業、指導者研修を担当。2002年より東京本社にて、外国語習得、言語発達、異文化理解教育について専門家を交えての研究に携わる。日本発達心理学会会員。日本子育て学会会員。ラボ・パーティは1966年「ことばがこどもの未来をつくる」をスローガンに発足し、2016年に50周年を迎えた子ども英語教育のパイオニア的存在。
 

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