「習主席訪朝のうわさ」に中国が沈黙する理由 アメリカとの貿易戦争が影を落としている?

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中国東北部では、中朝関係の改善によって経済に大きな変化が現れている。北朝鮮労働者は以前の3万5000人から5万人に増加。北朝鮮と接する中国遼寧省丹東市の中朝友誼橋前には、貨物を満載したトラックが再び列を作るようになった。北朝鮮商人の姿も、丹東のいたるところに見られる。

中国政府が北朝鮮との経済協力を通じて東北部を活性化しようとするのは今回が初めてではない。ある研究によれば、中国政府は10年ほど前から、このような計画に言及してきた。さらに現時点ではストップしたままとはいえ、中朝国境の鴨緑江地域には黄金坪(ファングムピョン)経済特区や新鴨緑江大橋など、中朝の共同事業が多数存在する。

今年の春から夏に正恩氏が3回訪中し習氏と会談したことをきっかけに、中国は北朝鮮との民間交流を活発化させてきている。

同じ言葉で話す中国と北朝鮮

8~9月に中国メディアは金日成総合大学や平壌の小学校、柳京(リュギョン)眼科総合病院を取材。9月には中国中央テレビが将泉(チャンチョン)野菜専門共同農場を訪れている。10月には中国の男女バスケットボール代表チームが平壌を訪れ北朝鮮と親善試合を行ったほか、金日成総合大学と中国の湖南師範大学が学術会議を共同開催。駐在北朝鮮中国大使館の職員も中朝友好宅庵共同農場で農作業を手伝っている。

中国政府がこのような交流に力を入れる狙いは2つある。まず、とくにエリート層を対象に北朝鮮国民の間にある中国のイメージを改善し、中国の支持者を増やすこと。次に、経済開放へとつながる改革案を北朝鮮に売り込み、経済連携を強化することだ。

中朝の交流活動に関する報道を見ると、たいていのイベントには双方の政府関係者が出席し、驚くほど似たような発言を行っていることがわかる。中朝の関係を「先輩たちから受け継ぎ、育んできた共有財産」と称え、習氏と正恩氏による3度の首脳会談による「合意を実行すること」の重要性と「社会主義経済建設」の目標に触れる、といった具合である。

このような発言には、建国70周年記念式典で正恩氏と栗氏が交わしたとされる言葉と瓜二つの表現が用いられていることが多い。これは中朝の関係が強化されつつあるというストーリーを作り出すために、中国ががっちりと情報統制していることを示している。

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