「習主席訪朝のうわさ」に中国が沈黙する理由 アメリカとの貿易戦争が影を落としている?

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また中国国営の新華社通信は、北朝鮮は「経済開発に総力を傾ける」「新たな(国家)戦略を実行中」であり、「中朝の社会主義的発展をともに前進させるため」「中国の豊富な経験」に学ぼうとしていると報じた。同記事は正恩氏の言葉そのものではなく、同氏の発言を要約するものとして、このような文言を引用したようだ。

中国は現在、北朝鮮との関係改善を国際社会に見せつけようとしているが、同時に韓国を味方につけておくことにも神経を注いでいる。

北東アジアの「黄金時代」

現在の南北融和に先鞭をつけた韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領に賛意を示し、南北首脳会談を支持する一方で、地域平和を主導しているのは中国だ、というイメージを作り出そうとしているのである。もっとも中国は、北朝鮮と他国の首脳会談実現について自らの手柄を誇示できるような状況にはない。その点では当初のもくろみは外れてしまったわけだが、国営の中国中央テレビ(CCTV)は、韓国と北朝鮮が中国政府の外交努力に感謝している、とする報道を行っている。

中国が韓国と北朝鮮の関係を重視するのは、北東アジアを牛耳ろうという野心があるからだ。韓国は中国の重要な貿易相手国であり、北朝鮮も含めた朝鮮半島全体との結びつきを強化できるかどうかは、中国の国益を大きく左右する。

中国が北東アジア活性化策の中心と位置づけているのが朝鮮半島だ。北東アジアは20世紀前半に日本が植民地支配していた頃には無数の工場が建てられ工業が集積したが、現在の吉林省、遼寧省、黒竜江省は、中国の他地域に対して経済開発で後れをとっている。

しかし最近の中国では、そんな北東アジアに「黄金時代」がやってきたとする報道や研究が多数登場。中朝の経済協力をテコに中国東北部を高度成長させる、という構想が語られるようになっている。

吉林省で行われた今年の「図們江国際投資貿易商談会」には、中国だけでなく、韓国や日本、ロシアからも多くの関係者が出席した。朝鮮半島情勢が急速に変化する中、北東アジアの開発機運は高まっている。

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