しかし、ゲーミフィケーションは単に“流行の飛び道具”ではなく、特にグローバルでの成長をまじめに考えている企業にとって、非常に有効なコンセプト・考え方となる。本稿では、ゲームの持つ“人を熱狂させる仕組み・メカニズム”を、グローバル人材育成の現場にいかに導入していくか、どうやってリアルの世界での業績アップに貢献しうる仕組みとして活用していくか、といったゲーミフィケーションの真の活用法について、最新の知見やグローバル事例をご紹介したい。
グローバル人材育成における課題
最近、日系のグローバル企業の人材育成担当者からお聞きする、グローバル教育における悩みは、大きく以下の2つに分類できる。
1.日本では当たり前のことでも、海外では当たり前にできない
日本企業の海外現地法人では、遵守徹底すべき社内ルールや最低限のコンプライアンスが守られていないケースが頻発しており、企業経営上のリスクが高まっている。
2.現地採用者がスピーディに幹部レベルに育たない
現地で採用した人材のスキルアップのペースが遅く、いつまでたっても現場のオペレーターの域を脱しない。また、見込みのある人材も幹部に育つ前に辞めてしまう。その結果、現地で経営を担える人材が不足し、成長の足かせとなっている。
特に日本企業が積極展開しているアジアにおいて、上記の課題が顕著だ。多様な価値観を持つ人材をマネジメントしていくには、従来の日本国内で機能していたOJT主体の伝承型育成だけでは、スピードの面でも、規模の面でも対応できていないことがその背景にある(下図)。
従来の国内中心のオーガニックな成長局面では、日本人としての共通のメンタリティ・価値観を背景に、上司が部下に、業務実践を通じて背中で教えることが可能だった。だが、新興国への進出などグローバル成長を加速化させている局面では、あらゆる面で従来の手法の横展開では限界を来している。この理由は、大きく2つある。
ひとつ目は、メンタリティ・価値観の異なる他国では、日本流の“背中を見せて語る”手法が通用しない、ということである。“ゴミ拾い”ひとつとっても、日本では自分の職場である店内や工場内にゴミが落ちていることに気づいたら拾うのは当然のことだが、たとえば中国では「拾う理由」を論理的に説明しないと行動してくれない。「なぜホワイトカラーの私が拾うのか」「私が拾うと掃除する人の仕事を奪ってしまう」など、言い訳はいくらでも出てくる。
2つ目は、人材を採用するペースが速く、現地法人で“教える人”の数が不足し、OJTの質・量が低下しているということである。非常に優秀で、マネジメント力も高いエースクラスがいたとしても、そのような人材は数に限りがある。アジアでどんどん採用ペースを加速している現状では、教える人の派遣が間に合わない。そのことを見越して、アジアから幹部候補生を採用し、日本で一定期間“促成栽培”することで、教える人の大量生産に乗り出している企業もあるが、とても採用ペースの拡大に追いついていないのが現状である。
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