高校野球で旋風起こす、ソフトボールの名将 川越東高校を躍進させた男

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試合後、3年生だけを集めて労をねぎらった。

「1対0で負けるのも、10対0で負けるのも同じ。勝てなかったのは監督の責任だ。今までよくやってくれた。いろいろ大変だったと思うけど、協力してくれてありがとう」

一方、別に集めた1、2年生たちには、試合の具体的内容には触れていない。浦和学院の先発投手は、2年生の小島和哉だった。川越東の先発メンバーには2年生が多く、2014年の甲子園を目指すうえで、小島は倒さなければならない相手だ。だからこそ、渡辺はあえて試合を総括しなかった。

「『こんなに差がある』と言っても、モチベーションにはならない。敗因を整理できるまでは、無駄に言っても仕方がない。小島君は来年もいる。次の年にも影響するので、いろいろ踏まえて話さなければならない」

短期間でチームがまとまり、決勝まで進出したことで、1、2年生は次の目標が明確になった。

「決勝まで行ったのだから、今度は最後まで勝つことが最大の目標になる。まずは挑戦権を得るために、やるべきことがある。その舞台に上がったら、去年のことを話す」

2013年の夏が終わった瞬間、次の手を打った。そうした周到な準備こそ、突然の異動にもかかわらず、渡辺が川越東を史上最高の成績に導くことができた要因だろう。

中島 大輔 スポーツライター

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なかじま だいすけ / Daisuke Nakajima

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。2005年夏、セルティックに移籍した中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に野球界の根深い構造問題を描いた「野球消滅」。「中南米野球はなぜ強いのか」(亜紀書房)で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。NewsPicksのスポーツ記事を担当。文春野球で西武の監督代行を務める。

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