「ボロボロにされた女性」が集う施設のリアル 多くは性暴力の被害者、加害者は身内

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「婦人保護施設だけでなく、乳児院とか児童養護施設とも関係を持っていますけど、未成年児童が受ける暴力で顕著に多いのが、実の父からの性暴力です。それが日本の現実です」(横田施設長)

筆者は十数年前から、貧困や性風俗の取材をしている。実の父親、義理の父親からの性虐待を受けた女性は、たまに現れる。大抵は、取材が終わる頃に「実は……」と女性たちから話しだす。親から性虐待を受けた女性は、そんな頻繁に現れるわけではないので今まで20人くらいか。それと実の母親から性虐待を受けた男性を1人知っているが、彼は先日自殺したと聞いた。

表ざたになりにくい児童への性虐待

児童への性虐待は国際的に重罪で、残酷な行為だが、家庭内で行われるために表ざたになりにくい。あと性虐待を受けている子どもが被害を自覚するのは大人になってからだったりする。児童相談所での相談件数は、実数と比べると著しく少なく、1540件にとどまっている。

「自分の子どもなのになぜ?って、いつも思う。でも絶対になくならない。これだけいろんな物や文化が発達して、学歴も高くなって社会性も高くなってきてるのになぜなのか理由を考えると、非常に未熟な男性の姿が浮かぶ。昔は父親に威厳があって女は男に従うという中でたくさんの性暴力がありましたが、今は未成熟な男性が身勝手に子どもたちに手を出していると思えてならない」(横田施設長)

人間は誰でも、生まれていちばん最初に信頼関係を持つのは両親だ。そのひとりである父親から性虐待を受けると、これからの人生、どうやって信頼をつくればいいのかわからなくなる。その後の人生にも影響する性虐待は、確かに横田施設長が指摘するとおり、女性の貧困の根本的な理由の1つになっている。

現在、苦しんでいる女性はどうすればいいのだろうか。

横田施設長は「行き場を失った女性は、性風俗や売春に頼る前に一度、福祉事務所や婦人相談所に相談してほしい」と言う。婦人相談所は売春防止法によって都道府県に設けられた行政機関で、検索すれば電話番号が出てくる。貧困やDVを筆頭に女性たちのあらゆる状況に対応している。

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