20代の若年女性の貧困は、ひとり親家庭や非正規労働、また奨学金や学生生活の費用不足、 精神疾患などで、大半が親の家庭環境から子どもへのシワ寄せが起きていることが原因になっている。
収入は「傷病手当金」のみ
何度もメールをやり取りして、やっと待ち合わせた五十嵐真麻さん(26歳、仮名)は1時間以上遅れ、無言のまま、表情だけは心なしか申し訳なさそうだった。色白でスレンダーな美人である。
化粧しておしゃれする普通の女性だった(実は貧困取材に登場する女性のほとんどは化粧していない)が、会った瞬間から若干挙動はおかしかった。遅れたことについて謝罪の言葉はないまま、どんとソファーに座り、「なんかもう人生つらくて、あんまり深く考えないようにしている。つらすぎ」と、いきなり悲観的なことを言いだした。
五十嵐さんは中堅大学卒業後、IT企業に新卒入社している。学生時代から気分の浮き沈みは激しい体質だったが、1年半前にうつ病と診断され、仕事はできなくなった。社会人になって都内で一人暮らしを続けていたが、現在は東京郊外の実家に戻り、父親と2人で暮らしている。収入は健康保険の制度である傷病手当金のみで、月15万円弱が振り込まれるという。
傷病手当金とは全国健康保険協会(協会けんぽ)の制度で、業務外の病気で仕事ができなくなった被保険者に対して生活費が支給される制度である。給与の約67パーセントがすぐに支払われて、受給期間が1年6カ月と充実している。
「私は悲しみを、ずっと心に秘めてるんですよ。大学4年生のときにお母さんが亡くなったこととか、思い出すと涙が出ちゃう。病気だし、彼氏がいないし、家庭崩壊だし、仕事できないし、本当にお先真っ暗。絶望しかない。お父さんは5年くらい前にリストラされて、フリーター。親がフリーターとか本当に恥ずかいし。あと来年1月で傷病手当は切れちゃう。不安で毎日死にたくなるし、たまに本当に自殺未遂とかしちゃうから」
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