傷病手当金で生きる26歳メンヘラ女性の苦悩

母親の「死」で家庭は完全崩壊してしまった

うつ病や双極性障害は気分の浮き沈みが激しい病気である。しばらく連絡が一切こないなど、五十嵐さんとのやり取りは難航したが、気分が落ち込んでいるときは電話に出られないし、メール返信ができないという理由だった。今日は電車に乗って移動して、悲観的な内容ながらも口数は多い。高揚している陽性症状である。落ち込んでいるときは強い希死念慮に襲われ、衝動的に大量に向精神薬を飲んでしまうこともあるという。

傷病手当金は給与額67パーセントが支給される。五十嵐さんにはおおよそ15万円程度が支給されている。月7万5000円の家賃と光熱費は父親と分担、それに日本学生支援機構へ奨学金返済すると、余るのは7万円くらいになる。父親とはずっと折り合いが悪く、一緒に食事することはない。掃除洗濯、料理など、基本的には家事はしないので食費はそれなりにかかる。

社会人になってから「メンヘラ」に

何もしていない生活は堕落している。昼過ぎに起き、やることは携帯をいじるくらい。今は新しい彼氏、結婚相手を見つけるために出会い系アプリにハマっている。少なくとも現状は「困窮」という貧困ではなく、あと3カ月後に迫った傷病手当金の期限切れにひたすらおびえていた。

「もうアップダウンが激しい。大学の頃からおかしくなって、社会人になってから完全にメンヘラ(心を患った人のこと)になった。ハイになったり、ローになったり。ローだと死にたくなる。今はすごいハイな気がする」

医者の診断書を見せてもらった。うつ病とされている。彼女は、いわゆるメンヘラ女子である。病状の影響か、基本的に会話は滑らかには成り立たない。メンヘラ女子は「寂しがり」「かまってちゃん」「ヒステリック」「自己中心」「男に依存する」「自己評価が過剰に低い」などの特徴があり、すべて当てはまっているように感じた。

規則正しい生活やフルで働くことができない精神障害や、メンタルヘルスの不調は貧困に陥る一大要因だ。傷病手当金になると「精神及び行動の障害」が28.6%(平成29年度全国健康保険協会調べ)になっている。

「私、人とズレてるんですよ。会話にならないってよく言われるし。あとお金もないし、人生大変じゃないですか。働くのも大変だしね。だから、死にたい。エンジニアやっていたときはそれなりに楽しかったけど、楽しくても病んでました。毎日同じ繰り返しでつらいな、みたいな。今は休んでるから平気だけど、働きだすと死にたくなっちゃいます」

“じゃあ、死ねばいいじゃん”という声が聞こえてきそうだが、おそらく3カ月後に社会復帰したとしても、安定して決まった時間に出社して働くのは困難だろう。社会人として働いている姿が想像できない。彼女は健康保険の傷病手当金がモラトリアムとなる貧困予備軍、生活保護予備軍といえる。傷病手当金の期限が終わった後、どうしていいかわからないようだった。

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