楽天は「英語公用語化」でどう変わったのか

TOEICスコアは830点、外国人社員は20倍に

――欧米の社員が日本企業的な文化を嫌って楽天を辞めてしまったり、そもそも入社すること自体をためらったりする懸念はありませんでしたか?

三木谷:どんな優れた企業文化を持つ会社でも、それが万人に受けるというものはないだろう。加えて、われわれが求めているのは非常にベーシックなことだと思っている。すごく特殊な文化を押し付けようというわけでもない。簡単にいえば「ものごとを徹底してやろうよ」という文化なのであって。逆に言うと、そういうマインドセットがない人でないと、どの国の人かに関係なく、なかなか成長を遂げられないのではないか。

――実際に英語化を始めてみて、想定通りに行かなかった点はありますか。

三木谷:当初は営業やマーケティングといったビジネスサイドの社員より、エンジニア社員のほうが先に英語を身につけるのではないかと思っていた。でもふたを開けてみると、エンジニア社員の学習パフォーマンスが最も悪いという結果だった。これは普段触れているプログラミング教材などが全部日本語のものだからかもしれないし、そもそも(教科としての)英語が苦手だから理系に進学するという傾向があるからかもしれない。

セダール・ニーリー教授:ハーバード・ビジネス・スクールの経営学教授。専門は組織行動学。おもにグローバル企業の社員が国や言語の境界を越えて協働する際に直面する課題について研究している。

二ーリー:エンジニア陣に限らず英語を苦手とする役員・社員は多くいた。彼らに効果的だった施策はいくつかあるが、メッセージングや強いリーダーシップがカギになった。英語化開始から間もないころ、三木谷さんはほぼ毎週、英語化やグローバル化の重要性を社員に説いた。リーダーが長期にわたり、頻繁に、同じメッセージを発信し続けることは特別なことだ。楽天は精選した多くの英語習得プログラムを惜しまずに社員に提供したが、こういった社員サポートのために費用をかけるには強いリーダーシップが必要。三木谷さん自身が率先してロールモデルになったのも大きかった。役員の評価面談や1対1の会話も徹底的に英語化した。

楽天がここまでやれた背景

――英語化に失敗した企業もたくさんあるとのことですが、楽天がここまでやれた背景には何があったのでしょうか。

二ーリー:もっとも大きいのはリーダーシップだ。打ち出した方向性に自信を持って、そのプロセスを続けていくのが大事だと思う。そのためには勇気が必要だし、リーダーがビジョナリー、先見の明があるようでなければならない。三木谷さんはこれらの点を兼ね備えている。公用語を変えるというのは非常に時間がかかる、胆力のいる仕事だ。最初に三木谷さんに会ったとき、「これは時間がかかる仕事になりますよ」と話したが、彼はそのことをよくわかっていたし、それでもやるという覚悟ができていた。

ほかの日本企業、アジア企業も、同じように英語化をぜひやるべきだと思う。しかもそれを迅速に、攻撃的な形でやっていかなければならない。リーダーたちの多くは、山は見えていても、山の向こう側が見渡せていないと感じる。本当に経営に必要なのは、山の向こうを見ることではないか。

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