楽天は「英語公用語化」でどう変わったのか TOEICスコアは830点、外国人社員は20倍に

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――「英語公用語化」は、イコール「社内文化の欧米化」だと考えていましたが、この本を読んで、楽天の場合はそうではなかったというのが驚きでした。三木谷さんが最初に英語公用語化に舵を切ったとき、3つの社員群(言語的疎外者、文化的疎外者、二重疎外者)それぞれへの影響をどれくらい想定していましたか。

三木谷浩史氏(以下、三木谷):社内公用語を英語にするというのはすさまじく大変なことだろうと想像していたので、始めるときは、あまり深く考えないようにしていた。あまり考えすぎると最後の一歩を踏み出せないと思ったので。とりあえず旗を立てると。

楽天の三木谷浩史・会長兼社長(撮影:梅谷秀司)

――社員への影響について、全体像が見え始めたのはいつ頃ですか。

三木谷:なかなか最初のうちは苦戦したので、ニーリー先生に応援を頼んだ。彼女が本当に、何百人規模という社員インタビューをしてくれて、やっと全体像が見えてきた。

英語化は組織の国際化ではない

――中でも、英語を母国語にする社員への影響は意外なものでした。なぜ、英語化と一緒に企業文化も欧米化する道をとらなかったのですか。

三木谷:逆説的だが、僕はもともと、日本の企業カルチャーを全世界的に浸透させるために楽天の英語化を推進した。組織を国際化するのではなくて、日本の仕事のやり方とか文化をメインにして、世界中のサービス会社に浸透させていけば、きっと成功するだろうと。そういう考えが基本的な仮説としてあった。

セダール・ニーリー教授(以下、ニーリー):三木谷さんの言う通り、企業文化が各国の文化を超える形で応用されたという点が非常にユニーク。多国籍企業にとっては、グローバルの企業文化が非常に重要だ。企業文化というのは団結の源になる。言語が統一されれば、アメリカ、ドイツ、フランス、インドなど、どこの人でもその企業文化をフォローしていける。

――文化的統一を図るとすると、どの国の企業文化を選択するかという判断が必要かと思います。グローバルカンパニーになりたい会社の多くは、言語と一緒に、企業文化ごと欧米化する道を選ぶ傾向にありますが、なぜ楽天は日本文化を選んだのでしょう?

三木谷:理由のひとつは、チームワークが得意であること。個人主義ではなく、全体を考えて動く。あとは企業倫理的、社会貢献的な考え方が非常に強いことも挙げられる。われわれでいうと「(個人や商店の)エンパワーメント」ということをつねに念頭に置いている。

もう一つ僕が常日頃思っているのは、日本文化というのは、最もほかの文化を吸収し、受け入れやすい文化ではないかということ。食べ物にしても、ラーメンとか、カレーとか、他国の文化を取り入れつつ日本風にモディファイされたものがたくさんある。実は日本こそが、ユニバーサルで、ダイバーシファイドな(多様化し得る)社会の下地を持っていると。そういう日本で生まれた企業自身が、国をまたいでリーダーシップをとっていければいいと思う。

二ーリー:日本には「おもてなし」の言葉があるし、これが実践されている場面を見られるのは、私にとってとても興味深い。日本文化は非常にエレガントで、細かいところもきちんとしている。美的感覚があり、規律も取れている。ハーバードビジネススクールでは、すべての学生に対して日本で実践されている「カイゼン」などについての授業を行っている。

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