河合:それに加えて「高齢化」も進みます。最近になって「2025年問題」という言葉がメディアをにぎわせていますが、団塊の世代が75歳以上になる2025年頃には重い病気にかかる高齢者も増えます。問題は社会保障費が激増することだけではありません。医療機関や介護施設、さらにはそこで働くスタッフまでもが足りなくなると予想されます。さらには、高齢化した親の面倒を見るための介護離職も急増し、企業の人手不足も懸念され、サービスを中心に社会インフラが維持できなくなるという不安もあります。
地方と大都市圏では「次元が違う少子化」が二重で進行
中原:人口減少の原因である少子化が非常に深刻なレベルにまで進んでしまったのは、女性の生き方の多様化や高学歴化、経済的な制約、子育て環境の未整備、子育て費用の増大など、さまざまな要因が複雑に絡み合った結果ですが、何といっても最大の要因は、経済活動の東京圏への一極集中にあると、私は確信しています。
多くの地方では若者が高校を卒業すると、その半数は大都市圏に流出する現状に甘んじています。大学を卒業しても地元に帰ってくるケースは少ない。その副作用として、地方では若者が少なくなり少子化が着実に進むと同時に、高齢者の死亡数が増え続け、人口減少が加速度的に進みつつあります。
その一方で、大都市圏では若者の流入により人口が増えましたが、企業活動が活発なために結婚率の低下と晩婚化率の上昇が併行して進み、若者が多いにもかかわらず少子化が広がってきています。すなわち、地方と大都市圏では次元が違う少子化が二重で進行しているのです。近年では、東京圏・大阪圏・名古屋圏の3大都市圏のなかでも、東京圏への人口の一極集中が少子化をいっそう深刻なものにしています。
河合:この問題で見落とされがちなのは、当面、東京圏の人口は増え続けるものの、今後、東京圏に流入してくるのは若者よりも高齢者が多くなるだろうという点です。地方で高齢となった親が東京圏に暮らしている40~50代の子を頼って同居する、あるいは近くに移り住むケースが増えることでしょう。
団塊世代が85歳以上となる2034年には、80歳以上の人口が1630万人を超えると予想されています。この頃になると、東京圏に流入してくる高齢者は目に見えて多くなると思います。「東京」が日本でもっとも高齢者数が増える街となるのです。
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