東京も地方も「24時間型社会」はやめるべきだ 「未来の年表」著者・河合雅司氏に聞く<前編>

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河合:私が提言しているのは、第2子、第3子が生まれた世帯を優遇するというアイデアです。こうした「多子加算」の考え方は、いくつもの国で実施されています。たとえば、第2子が生まれた世帯に対しては、その子が大学を卒業するまで所得税を大幅に下げてあげる。さらに、第3子以上が生まれた世帯に対しては、所得税の優遇に加えて1000万円規模の給付を与えてもよいでしょう。

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出生動向基本調査によれば、第3子以降の出産を見合わせた理由として、7割の夫婦が「経済的な負担」を理由に挙げています。産みたいと思っているのに、お金が心配でためらっているのであれば、その心配を解消してあげればよいのです。

国民には「産めよ殖やせよ」につながる出生奨励策に対するアレルギーが強いため、政府はこれまで少子化対策に及び腰でした。子どもに対する経済支援策も「子育て支援」の側面が強調され、子ども1人あたりの給付額に大きな差をつけることはタブーとされてきました。

しかし、ここまで少子化が危機的な状況になった以上、政策を転換するときです。もちろん私も「出生奨励策」は否定されるべきと考えますが、生まれてからのサポートである「子育て支援策」から、そろそろ各国が行っているような、子供が欲しいのに持てない、結婚したいのにできない人に寄り添う「出生支援策」に移行すべきと考えます。子どもの数に応じて給付を大幅増額する「多子加算」に踏み切る段階にきていると思います。

本社機能を地方移転した割合に応じた法人税減税を

中原:その通りですね。河合さんの提案は、現物給付という形に限定すれば、相応の効果を発揮すると思います。

それとは別の観点からになりますが、私は東京一極集中を改めるために、法人税の引き下げについて新しい制度設計を構築してほしいと考えています。現状、日本は海外との法人税の引き下げ競争をしていますが、その競争にただ乗っかっているだけではだめだと思っています。その代わりに、企業に対して法人税を一律に減税するのではなく、地方へ本社機能を移転した割合に応じて税率を引き下げる仕組みを取ってほしいですね。

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たとえば、本社機能の25%を地方へ移転した場合は法人税率を従来よりも5%引き下げる、50%を移転した場合は10%引き下げる、75%を移転した場合は15%引き下げるといった仕組みにすれば、大企業が地方へ移転するインセンティブを高めることができるのではないでしょうか。

そのうえで、地方自治体が大企業の経営者に魅力的な誘致案を示すことができれば、地方は意外に多くの大企業を招くことができると思っています。なぜなら、志の高い大手企業の若手経営者を中心に、東京から地方へ本社機能を移したいと思っている人たちは着実に増えてきているからです。

大手企業の若手経営者だけでなく、有望なベンチャー企業の若手経営者のなかにも、地方に移転するメリットを意識しはじめている人たちが増えてきています。地方での働きやすさや生活のしやすさに注目し、従業員の幸せと生産性の向上の両立ができると考えはじめているのです。社会のすみずみまでITが普及していく世の中では、とりわけIT関連の企業は東京にこだわる必然性がなくなってきているので、本社機能の移転需要は以前よりも確実に増えてきていると実感しています。

中原 圭介 経営コンサルタント、経済アナリスト

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なかはら けいすけ / Keisuke Nakahara

経営・金融のコンサルティング会社「アセットベストパートナーズ株式会社」の経営アドバイザー・経済アナリストとして活動。「総合科学研究機構」の特任研究員も兼ねる。企業・金融機関への助言・提案を行う傍ら、執筆・セミナーなどで経営教育・経済教育の普及に努めている。経済や経営だけでなく、歴史や哲学、自然科学など、幅広い視点から経済や消費の動向を分析しており、その予測の正確さには定評がある。「もっとも予測が当たる経済アナリスト」として評価が高く、ファンも多い。
主な著書に『AI×人口減少』『これから日本で起こること』(ともに東洋経済新報社)、『日本の国難』『お金の神様』(ともに講談社)、『ビジネスで使える経済予測入門』『シェール革命後の世界勢力図』(ともにダイヤモンド社)などがある。東洋経済オンラインで『中原圭介の未来予想図』、マネー現代で『経済ニュースの正しい読み方』、ヤフーで『経済の視点から日本の将来を考える』を好評連載中。公式サイトはこちら

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