東京も地方も「24時間型社会」はやめるべきだ

「未来の年表」著者・河合雅司氏に聞く<前編>

政府が、この問題に対していかに鈍感で及び腰であったかを私が痛感したのが「静かなる有事」と名付けた今から10年ほど前のことです。危機感を募らせていた私が、国民的な議論を巻き起こそうと、多くの媒体に人口減少問題に関する記事を積極的に寄稿し始めていた頃でもあります。

河合 雅司(かわい まさし)/1963年、名古屋市生まれのジャーナリスト。産経新聞社論説委員、高知大学客員教授、大正大学客員教授のほか、内閣府、厚労省、農水省の各有識者会議委員も務める。専門は人口政策、社会保障政策。中央大学卒業。2014年、「ファイザー医学記事賞」大賞を受賞。(撮影:今井康一)

私は寄稿するだけではなかなか世間に通じないと考え、各省を訪ねて“心ある官僚”たちに、政策分野ごとに人口減少が今後もたらすであろう影響を「見える化」してもらうべく、これからこの国で何が起こるのか国民にわかりやすく示すよう要請して回りました。何が起こるのか知らないのでは、対策の打ちようも、個々人がどう備えるべきなのかを考えることができないと思ったからです。

これに対して即座に同感し、動いてくれたのが内閣府の担当者でした。事業化に向けて予算要求すべく調整に乗り出してくれたようですが、ここで当時の大臣からストップがかかったのです。「国がそんなデータを公表したら、国民の不安をあおるだけだ」というのが反対理由だったそうです。

「政府がやろうとしないなら、自分でやるしかない」と考えた私は1人でコツコツとデータ集めを進めました。それが、10年の時を経てベストセラーとなった『未来の年表』(講談社現代新書)の出版へとつながったというわけです。あの時、政府がもっと私の意見具申に真剣に耳を傾けてくれていたなら、現在の対策にはもっと多くのバリエーションが残されていたことでしょう。

20年後には毎年「和歌山」「香川」級の自治体が消えていく

中原:おっしゃるとおりですね。私が人口減少問題に警鐘を鳴らし始めたのは5~6年前からで、河合さんより遅かったわけですが、国民レベルで意識するには非常に難しいと痛感しています。そうはいっても、何もしないで放っておいたら、日本の将来はさらに悲惨になってしまう。

そういった意味では、私がこの問題に対してできるのは、この問題をもっと多くの人々に知ってもらい、微力ながらも少子化対策の流れに協力していくということだろうと思っています。だから今回も、『AI×人口減少 これから日本で何が起こるのか』(東洋経済新報社)という形で、書籍として世に出しました。

ところで、国立社会保障・人口問題研究所による人口推計によれば、1年間の人口減少数は東京2020オリンピックから2年後の2022年には50万人台に達するとされています。その後も人口減少のペースは加速していき、2023年に60万人台、2026年に70万人台、2031年に80万人台、2037年には90万人台、そして2065年にはついに100万人の大台に突入するといいます。20年後には、今の和歌山県や香川県といった自治体が毎年1つずつ消滅するほどの恐ろしい事態が訪れようとしていますね。

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