トヨタがひそかに進めた「5大陸走破」の裏側 過酷な環境でこそ「いい車」の本質が見える

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ルートは2つ設定され、チーム1が8月27日タンザニア・アルーシャから出発し、9月20日に南アフリカ共和国・ヨハネスブルクまでの4517kmを走破。チーム2が10月9日にナミビア・ウィントフックを出て、11月1日に南アフリカ共和国・ダーバンまでの6006kmを走る。

車両は「ランドクルーザー200/プラド/70」「ハイラックス/フォーチュナー」、そして競合車を毎日乗り換えながら走行。1日の走行距離は300~400kmで1台の車両を3人で交代しながら走らせる。筆者はスケジュールの都合でチーム1の後半に合流、南アフリカ・ムシナ~南アフリカ・ヨハネスブルク間を走行した。

個人的に残念だったのは、南アフリカ共和国はアフリカ大陸の中でも先進国なので道路環境は整っており、未舗装路や砂漠といった多くの人が想像するアフリカの道を経験できなかったことだ……。関谷利之さんは「タンザニアの道は自分が知る道の中でいちばんひどいと思いました。波状路を超えて溝を走るような道をひたすら2時間(笑)。ダンパーは壊れるしもうやめて……という感じでした」と。

とはいえ、南アフリカの道も緊張感は非常に高い。都心は整備されているが、ちょっと街を外れると中央の白線もない対面通行で路肩もなく、舗装は荒れて所々穴も開いている。延々と直線が続くところもあれば、ワインディングのようにコーナーが多く起伏の大きな道も存在する。そんな中を100~120km/hで走るのである。「こんな所でクルマが故障したら?」と信頼性の重要性を感じた。

その一方で、ランクル=道なき道を走る=オフロード性能重視というイメージだが、同じアフリカでも南アフリカ共和国の道では、オンロード性能や高速性能そしてコーナリング性能もバランスよく備える必要があることも実感した。やはり、どのようなクルマであってもバランスは大事である。

所変われば求められるニーズや性能は異なる

トヨタ南アフリカのDavid DE VILLIERSさんにそんな印象を伝えると、「クルマの性能は現状で問題ないが、アフリカでは走行距離が多いので、それに伴うメンテナンスコストをもっと下げてほしい」と。所変われば求められるニーズや性能は異なるのだ。

ちなみに筆者は今年6月に行われた事前研修会/走行訓練の取材も行っている。このプロジェクトの概要や心構え、車両の運行前点検やコンボイ走行、悪路走行などが行われたが、悪路走行以前に普通に運転するのがやっとの人や慣れないMT(マニュアルトランスミッション)の操作に苦戦している人を見て、「本当にこの人たちはアフリカで走れるのだろうか?」と正直不安だった。

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