トヨタがひそかに進めた「5大陸走破」の裏側

過酷な環境でこそ「いい車」の本質が見える

トヨタの世界の道を使った「究極の人材育成」とは(写真:トヨタ自動車)

今、トヨタ自動車のクルマづくりは大きな変革期を迎えている。2007年に自動車販売台数世界一となり、世界シェア10%も夢ではない状況になった。そのためには、より多く/より安く/より効率的に造れるクルマが求められた。

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しかし、2008年9月のリーマンショックで一気に赤字へ転落。トヨタは一気に窮地へと追いやられた。そんな反省から、2009年に就任した豊田章男社長が掲げたテーマはクルマ屋として原点に戻ること、すなわち「もっといいクルマづくり」であった。

2015年末に発売された4代目「プリウス」から始まった、トヨタのクルマづくりの構造改革「TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャ)」はその象徴だ。多くの人はTNGA=プラットフォーム/パワートレインの刷新だと思っているが、実は「クルマづくり」や「仕事の進め方」を大きく改革させるためのキーワードである。

ただ、従業員数36万9124人(2018年3月現在)を抱える大企業であるがゆえに、全社員が豊田章男社長と同じ「もっといいクルマづくり」の志を持っているかと言うと、必ずしもそうではないのも事実である。トヨタにはさまざまな部署が存在、中には自動車メーカーに在籍しているにもかかわらず、クルマを運転することはもちろん、クルマとまったくかかわらない人も多い。そのような人たちに「もっといいクルマづくり」と言葉で伝えてもピンとこないのも当然だろう。

もっと世界の道を知る必要がある

豊田章男社長は、モータースポーツ活動が人材育成につながることを実感したニュルブルクリンク24時間レースの挑戦の経験を基に「もっといいクルマをつくるトヨタになりたい。そのためには、もっと世界の道を知る必要がある」「ニュルの活動は限られた人間にしかできない。同じような経験を全社員に味わってほしい」と考えた。

そこでスタートしたのが「道が人を鍛える、人がクルマをつくる」という、トヨタのモータースポーツ活動の思想を根幹とする、「TOYOTA 5大陸走破プロジェクト(以下5大陸走破)」だ。例えるなら、世界の道を使った「究極の人材育成」と言ってもいい。2014年のオーストラリア大陸を皮切りに、2015年に北アメリカ、2016年に南アメリカ、2017年にヨーロッパ大陸を計480人の従業員が8万9000km、350日かけて走破を行った。

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