乙武:その“個”に着目した場合、日本代表はどの程度のレベルにあるのでしょうか。まず気になるのは体格面。日本代表において最も高さで勝負できるのは藤本怜央選手かと思いますが……。
香西:確かに彼は大きい部類ではありますが、世界にはあのくらいのサイズがごろごろいますね。
乙武:なるほど。日本では突出した存在の藤本選手の高さでさえ、世界レベルでは標準クラスとなってしまうのですね。ちなみに、フィジカルで劣る日本代表は、世界の高さに対して何を武器に対抗すべきなのでしょうか。
香西:まずはスピードでしょうね。それから、相手をゴールに近づけさせないディフェンスワーク。相手の高さが最も驚異になるのは、ゴール付近です。ゴールに近づけば近づくほど高さが有利になるので、そうさせないための動きを、一人ひとりがその場の状況に応じてクリエイティブに判断できるようにならなければなりません。
バスケIQを上げるにはどうするか
乙武:日本代表チームはロンドン・パラリンピックで9位、リオ・パラリンピックで9位、さらに今夏行われた世界選手権でも9位。順位だけを見れば横ばいの状況にあるわけですが、これは伸び悩みなのか、それとも、いままさに力を養っている過渡期なのか。実感としてはいかがですか?
香西:これは両方の側面があると思います。僕たちは間違いなく力をつけてきているとは思います。ロンドンの9位とリオの9位では内容が異なるし、リオの9位と世界選手権の9位もまた違います。というのも、たとえば今回の世界選手権では、これまで倒すことのできなかったトルコに勝ち、初めてグループリーグ1位通過を果たしています。トルコはヨーロッパのトップチームですから、これは意義のある勝利だったと思っています。
乙武:なるほど。確かに、大きな前進を感じさせますね。
香西:9位にとどまっている結果を軽んじているわけではありませんが、感覚として世界との距離は確実に縮まっています。ただし、トルコ戦のような大きな勝利を何度も繰り返すだけの力はまだありません。今回にしても、大会期間中に一度失った勢いを取り戻すことができなかったのは、やはり課題だと思います。
乙武:香西選手は以前、メディアのインタビューで「バスケIQを上げていくことが重要」と発言されています。バスケIQとは、経験則はもちろん、日頃からいかに考えながらプレーできるかが大切ということですよね。
香西:そのとおりです。練習や試合ではもちろん、コート外にいるときでも、どれだけゲームのことを考えられるか。僕もそのために最近、作戦ボードを買ったんですよ。
乙武:コートを模した図形の上で、マーカーを動かしながら作戦を考えるものですね。
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