3年で市場は成熟化、新型「アイコス」の憂鬱 競争激化に伸び悩み、加熱式たばこの先行き

拡大
縮小

各社の積極的なプロモーションの効果もあり、加熱式たばこの2017年の市場規模は6000億円と、2016年に比べて2.8倍に急拡大した。紙巻きたばこを含めた、たばこ市場でのシェアも、足元では20%近い(英調査会社のユーロモニターインターナショナル調べ)。

だが、アイコスを中心に爆発的に成長してきた市場は「2018年に入って成長は明らかに鈍化し始めている」(カランザポラスCEO)という。

実際、ユーロモニターは加熱式たばこ市場の成長率を2018年以降は1ケタに減速すると予想。業界内でも「新しいモノ好きの消費者が飛びついた時期はもう終わった」(たばこ会社幹部)と、発売から3年を過ぎて早くも市場は成熟し始めている。

やや低価格の新ブランドを投入へ

そこでPMIは今回の新製品を投入するほか、たばこそのもののラインナップも拡充する方針だ。10月からは、従来の「マールボロ」に加えて、西日本を中心に「HEETS」(ヒーツ)ブランドのテスト販売を始めた。

価格はマールボロよりも1箱当たり30円安い470円と、「多くの消費者が手に取りやすいようにした」(カランザポラスCEO)。10月からのたばこ増税でも需要が冷え込まないようにする狙いもありそうだ。

一方で、競合メーカーによるPMIの追い上げは激しい。紙巻きたばこで国内シェアトップのJTは、出遅れていた加熱式たばこの生産体制を急ピッチで整備。今年9月を予定していた全国拡販の時期を7月に前倒しして、コンビニでのJTの加熱式たばこ製品のシェアは10%まで向上した。さらに、早ければ年内にも新製品を発売する方針だ。

BATも、7月にグロー専用の新ブランドを発売しラインナップを拡充した。喫煙者の比較的多いバーでサンプルを配布するなど、攻勢を続ける。

たばこ市場そのものの縮小が続くため、加熱式たばこもいつかは曲がり角を迎える。市場を切り開いたアイコスは、新製品を武器に顧客層を広げることができるだろうか。

石阪 友貴 東洋経済 記者

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いしざか ともき / Tomoki Ishizaka

早稲田大学政治経済学部卒。2017年に東洋経済新報社入社。食品・飲料業界を担当しジャパニーズウイスキー、加熱式たばこなどを取材。2019年から製薬業界をカバーし「コロナ医療」「製薬大リストラ」「医療テックベンチャー」などの特集を担当。現在は半導体業界を取材中。バイクとボートレース 、深夜ラジオが好き。

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