「米朝の対話」は、交渉にすらなっていない 「要望をはっきりさせろ」と元米国務次官補
制裁を一切緩和しないまま、北朝鮮にすべての要求を飲ませようとしても、それでアメリカが成果を引き出せるとは思わない。反対に北朝鮮が非核化について何もせずに完全な制裁解除を要求してきたとしても、うまくいかないだろう。
――では、膠着を打ち破る最善の方法とは?
計画を練れ。交渉しろ。腰を据えて話し合え。「オーケー、そちらがそれをやってくれるのなら、こちらはこれをやりましょう」と言え。それで、向こうが「じゃあ、こちらはこれをやりますから、そちらにはこれとこれをやっていただきたい」と言ってきたら、「わかりました。話し合いましょう」と応じる。こういうのを交渉と呼ぶのだ。私が見るかぎり、今の米朝対話は交渉になっていない。あんなのは、ただの意見交換みたいなものだ。
――9月の南北首脳会談前に、韓国の文氏は米朝の非核化交渉を促進する役割を強めていきたいと語っている。文氏の仲介は役に立っているか。
私としては、文氏を仲介役ではなく、盟友と考えたい。米韓が一体となって交渉にあたっているのだとしたら、仲介役なんてそもそも必要ないだろう。非核化交渉をもっと多角化し、韓国がリアルタイムで交渉に加わる形にしていってもらいたい。
間違いだらけの伝言ゲーム
――北朝鮮への対応で、米韓政府の間には亀裂が生じているように見える。
トランプ政権の政策が何なのか、私にはわからない。トランプ氏が何か言うと、ジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が別のことを言い出す。そして、ポンペオ氏がさらに別のことを言う。これはよくない。
――政府から矛盾した発言が出てくると、どんな悪影響があるのか。
発言が一貫しないときには、混乱が生じているものだ。ポンペオ氏との会談で北朝鮮は次のように聞いたっていいはずだ。「われわれが非核化し、手持ちの核兵器と核兵器の材料を全廃した場合、アメリカはどうするつもりなのか」と。
フェアな質問であり、アメリカはこれに答える必要がある。だが、その答えが何なのかは私にもわからない。私も混乱させられているからだ。ポンペオ氏が何か言ったとしても、ボルトン氏は別のことを言う。そして、トランプ氏はもっとたくさんのことを言う。