「米朝の対話」は、交渉にすらなっていない

「要望をはっきりさせろ」と元米国務次官補

――あなたがブッシュ政権で働いていたとき、政権内で矛盾はなかった?

問題はあった。しかし、今のようなものでは、まったくなかった。

――北朝鮮との合意内容も今よりずっとクリアだった、と?

そうだ。なぜなら、われわれには英語で書かれた合意文書があり、そこにはこう書かれていた。「北朝鮮はすべての核兵器及び既存の核計画を放棄すること、ならびに、核兵器不拡散条約に早期に復帰することを約束した」。とてもクリアだ。

ギリギリになって突然、「いらない」と言い出す

――ところで、北朝鮮との非核化交渉を担当していた頃、どんなことにいちばん苦労したか。

要求していたように見えたものを、ギリギリになって突然、いらないと言い出すことだ。北朝鮮が考えていることを理解するのは、いつだって難しかった。あるとき私は中国側から、北朝鮮が相互連絡事務所を持ちたがっていると言われた。領事館というわけではないが、米朝の連絡事務所をワシントンDCと平壌に開設したがっている、という話だ。これと同じことをアメリカは、1972年に中国と行っている。

北朝鮮は本気だ、と中国からは言われた。そこで、私はワシントンにとって返し、全力で周囲を説得し、(当時の)コンドリーザ・ライス国務長官とブッシュ大統領の合意を取り付け、北朝鮮にこう伝えた。「いい知らせだ! 北朝鮮の連絡事務所をワシントンに作り、アメリカの事務所を平壌に作りたいのなら、アメリカはこれに応じられるぞ」。

これに対し、北朝鮮はこう言った。「いや、そういうことは望んでいない」。それで、話を持ち込んできた中国に「北朝鮮は連絡事務所を作りたがっているということではなかったのか」と聞くと、こう言われた。「ええっと、確かにそのはずだったんだが……気が変わったのではないか」。こういうのには、本当にまいった。

(文:チ・ダギョム)

筆者のチ・ダギョム氏は、北朝鮮ニュースの記者で韓国ソウルを拠点とする。以前はロイター通信の動画ニュース部門で働いていた。
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