地方を滅ぼす「成功者への妬み」のひどい構造 「3つのネチネチ」で成功者はつぶされていく

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結局、地元では「触らぬ神に祟りなし」ということで、せっかく頑張っていても「うわさのある人」というレッテル貼りがなされ、多くの人が離れていき、仕事に大きな支障をきたすこともあります。時に、精神的に病んでしまったり、病気で倒れてしまう人さえいるほどです。

恐ろしいことに、こういう場合、ほとんどのケースでは地元の一部が騒ぎ立て、多くの人は無関心です。仮に事情はわかっていても、頑張っている人が潰されていく姿を、黙って見ていることが多くあります。そこには「自分には関係ない」と無関心を決めこんだり、心のどこかで挑戦者が失敗する姿に安堵したり、成功者がたたきのめされる姿を期待するという心理もあるでしょう。

挑戦者を支え、成功者を称えることが地域を発展させる

もちろん、どんなにひどい妨害策を受けても確たる覚悟をもってその地元で事業を継続し、仲間と大きな仕事を成し遂げる成功者・挑戦者もいます。

しかし、ほとんどの人はそのような妨害策などに嫌気が差してその地域を去り、より挑戦に寛容である地域へ移動します。当たり前です。地域を変えるために不確実な日々を送るより、別の地域に行ったほうが、話が早いからです。相対的にいって人口集積が大きく、他人の挑戦に良い意味で無関心な都市部のほうがいちいちやることなすことに他人から介入されることもないため、都市部のほうが新たな挑戦が始まりやすい傾向にあるとも言えます。

「新規創業支援」「移住定住促進」という政策において重要なのは、創業支援への予算拠出や移住定住者への補助金などだけではありません。むしろ新たな挑戦に寛容であり、成功者を称えるという基本的なスタンスを地域の多くの人が共有できるか、にあります。

挑戦も成功も、つねに孤独から生まれやすいものです。だからこそ地域において互いに支えながら挑戦し、成功を讃えながらさらなる成功を目指す構造をつくれるか否かが問われます。妬みで新たな芽を潰した先に、「地域の未来」などはありません。他人の挑戦を明るく支えられるかどうか。これが、地域の未来を支えるのです。

木下 斉 まちビジネス事業家

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きのした ひとし / Hitoshi Kinoshita

1982年東京生まれ。1998年早稲田大学高等学院入学、在学中の2000年に全国商店街合同出資会社の社長就任。2005年早稲田大学政治経済学部政治学科卒業の後、一橋大学大学院商学研究科修士課程へ進学、在学中に経済産業研究所、東京財団などで地域政策系の調査研究業務に従事。2008年より熊本城東マネジメント株式会社を皮切りに、全国各地でまち会社へ投資、設立支援を行ってきた。2009年、全国のまち会社による事業連携・政策立案組織である一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスを設立、代表理事就任。内閣官房地域活性化伝道師や各種政府委員も務める。主な著書に『稼ぐまちが地方を変える』(NHK新書)、『まちづくりの「経営力」養成講座』(学陽書房)、『まちづくり:デッドライン』(日経BP)、『地方創生大全』(東洋経済新報社)がある。毎週火曜配信のメルマガ「エリア・イノベーション・レビュー」、2003年から続くブログ「経営からの地域再生・都市再生」もある。

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