徳島の夏の風物詩、「阿波おどり」が大混乱のうちに幕を閉じました。いろいろな意味でメディア露出は多かったにもかかわらず、4日間での人出は減少して約108万人。昨年より15万人減少しました。
確かに日取りも悪かったものの、「主催者団体の巨額累積赤字」だけでなく「徳島市観光協会の破産」と来て、さらには全員参加でフィナーレとして行う総踊りについても「やる、やらない」を、祭りの当日まで引きずってしまったため大混乱となりました。
大混乱を招いた原因についてはすでに「徳島の阿波踊りが『イベント地獄化』した理由」で触れたとおりですが、「地域内の泥仕合」に本当に飽き飽きした方も多かったのではないでしょうか。一時が万事、今回の阿波おどりの混乱は徳島市の現在の状況を象徴する出来事であり、衰退地域によくある構造とも言えます。
「地域の衰退→行政の予算化→利権争い」の構図
そもそも祭りは、本来であれば「稼ぐ地域産業」があり、その「地域産業による余剰を地域内で循環させるための行事」といった側面が強くあります。大抵の伝統行事は神事と絡んだものです。そのなかでも華やかな祭りには「その地域の経済力が増した時代に発展したもの」が多くあります。
しかしながら栄華を極めた地域産業が衰退していくと、「不採算だけど伝統行事だから」ということで行政が予算を出すようになり、祭りに関連する利権で稼ごうとする人が暗躍します。阿波おどりも例外ではありません。長い歴史の中で形成されてきた、さまざまな利権の所在をめぐって互いに争っているわけです。
今回の「総踊りをめぐる小競り合い」も、ある意味の茶番です。徳島市の思惑はこうです。阿波おどり事業で過去の赤字責任を事実上認めて3億円の寄付を行った徳島新聞を、運営の中核に置きつつ、新たな「分散会場での手法で稼ごう」とするのが本心なのに、表向きは「安全のため」という建前で「総踊り中止」で押し切ろうとしました。
対立している踊り手団体である「阿波おどり振興協会」側も、「いやいや、ダイナミックな総踊りを市民は望んでいる」、などといって「総踊り」を独自に決行しましたが、不明瞭な運営が指摘され、破産した徳島市観光協会との関係がチラついたままです。
表向きは権力側と市民側の対立のようにメディアは描いていたものの、実際のところはどっちもどっちというところです。こうした「しょうもない対立」に、市民や観光客など多くの人が飽き飽きとしたことが動員数の伸び悩みにつながったことは否めないでしょう。
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