民主主義は、どのように殺されていくのか ハーバード大学教授が導き出した結論とは?
本書『民主主義の死に方』は、世界各地の独裁政治を研究してきたハーバード大学教授である著者が、民主主義がどのように、そしてなぜ死ぬのかを追求する。著者はあらゆる場所、時代の民主主義が死んでしまった事例を紹介しながら、当たり前に享受している民主主義がいかに微妙なバランスのうえで成り立っているものなのかを教えてくれる。
幅広いケースを考慮する本書だが、議論のフォーカスはアメリカおよびトランプ現象に当てられているので、日々伝えられるアメリカ政治の異常事態の意味がより良く理解できるようになるはずだ。米連邦最高裁判所判事にカバナーが選ばれたことがどれほどの意味を持つ事件なのかを思い知る。
民主主義が崩壊する瞬間といえば、銃を持った兵士や市民をなぎ倒そうとする戦車を思い浮かべるかもしれない。たしかに、アルゼンチン、ブラジル、ガーナやパキスタンのような冷戦時の民主主義崩壊の4分の3は、軍事力を用いたクーデターによってもたらされた。
「合法的な民主主義の浸食」が大きな脅威に
しかしながら、ヒトラーに代表されるように選挙で選ばれた指導者も、軍事クーデターと同程度の破壊力を発揮した。特に現代の世界では、「ファシズム、共産主義、あるいは軍事政権などによるあからさまな独裁はほぼ姿を消し」ており、選挙というプロセスを挟んだ民主主義の崩壊がより顕著になっている。このような合法的な民主主義の浸食は、眼に見えにくい分、より大きな脅威となりうるのだという。
著者は世界のさまざまな国を比較することで、事前に検知しにくい独裁者の卵を見分けるための“リトマス試験紙”となる4つの行動パターンを抽出している。
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