ニューヨーク市場が大荒れとなった。10月10日のダウ工業株30種平均は831ドルの下げとなり、翌11日分も併せると約5%分の下げとなった。日経平均株価も大幅安となったし、中国、韓国、台湾なども軒並み下げて世界同時株安となっている。この下落をどう見るべきなのか。何はさておき、そこから話を始めなければならない。
今回の下落はわりと理由がはっきりしている
大きな下げ相場は10月に起きることが多い。古くは1929年10月28日の「暗黒の木曜日」、そして1987年10月19日の「ブラックマンデー」、さらに2008年のリーマンショック後の株安局面も、9月より10月の方が手厳しかったものである。さて、今回の株価下落はどこまで行くのだろうか。
すでに忘却の彼方かもしれないが、今年2月にも同様なニューヨーク発の下げがあった。2月5日と8日、ダウ平均は1日に1000ドル以上の下げを連発した。あのときは「何が原因か」が杳(よう)として掴めず、市場は疑心暗鬼に陥ったものだ。不思議なもので、「××ショック」みたいな「戒名」がつくと相場は落ち着きを見せる。姿の見えないときこそ、恐怖がいや増すのである。
今回の下げについは、「長期金利の上昇を嫌気して」とわりと理由がはっきりしている。「10年物のアメリカ国債が3%以上で回るのなら、新興国やベンチャー投資なんかさっさと引き上げてそっちへ行きますわ」、という投資家は少なくないだろう。それはある意味健全なことで、株式市場のおカネが債券市場に流れるようになる。低金利の欧州や日本の資金もアメリカに流入するだろう。結果として債券が買われるので、長期金利はいずれ下がる。だったら今起きているのは正常な調整過程だということになる。
いや、もっと心配なのは貿易戦争の方だ、という声もありそうだ。9日、IMF(国際通貨基金)が新しい世界経済見通し(Challenges to Steady Growth)を発表した 。2018年と19年の世界経済の成長予想をそれぞれ0.2ポイント下方修正し、3.7%、3.7%とした。それだけなら大騒ぎするほどのことはないのだが、今回の報告書には貿易戦争を5段階で試算した分析結果が掲載されている(Scenario Box1、Global Trade Tensions)。
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