想定しているのは、①現状の高関税シナリオ、②アメリカが対中輸入の残り2670億ドルにも25%の関税を課した場合、③自動車関税をさらに追加した場合、④コンフィデンス・ショックがあった場合、⑤さらに金融市場の混乱が加わった場合、の5通りである。
これらが全部発動された場合、世界経済は0.8ポイント下振れすることとなり、世界経済の成長率は3%の大台を割ってしまう。アメリカ経済はもちろん影響を受けるが、それ以上に中国経済が打撃を受けるし、日本経済も巻き添えになって2020年はマイナス成長に転じるとか、結構恐ろしい読み筋となっている。
今回の下落がちょっとだけ嫌な予感がするワケ
もっともこの分析資料は、この週末、インドネシアのバリ島で行われるIMF世銀総会に向けて用意されたものだ。アメリカ政府に対して警告を発する、という政治的意図があることは想像に難くない。実は貿易戦争のシミュレーションは、7月にブエノスアイレスで行われたG20財務相・中央銀行総裁会議の直前にも簡易版が発表されている。そちらは拍子抜けするくらい軽目の結果に終わっていたので、今回は意図的に大袈裟にしたのかもしれない。まあ、その気持ちは分かるけどね。
というわけで、筆者は今回の株価下落はそこまで大騒ぎしなくてもいいのでは…と思っている。それでも、ちょっとだけ嫌な予感もしている。というのは、アメリカ株のラリーが始まったのは2016年11月9日、すなわち大統領選挙でドナルド・トランプ候補の勝利が決まった翌日からだ。ちなみにその当時、ダウ平均はまだ1万8000ドル台であった。
そこから2年近く、われわれは半強制的に「トランプ劇場」の観衆となり、日々展開するドラマに驚いたり、呆れたり、憤慨したりしながら今日に至っている。その間に、株式市場は快進撃が続いてきた。さる共和党系のアナリスト曰く。トランプ政権下で株が買われるのには3つの理由がある。①税制、財政上の期待感、②規制緩和の進展、そして③アニマルスピリッツの復活だ、と。
確かに大減税は実現し、その効果は足元のアメリカ経済を下支えしている。規制緩和も、環境から金融までさまざまな分野で進行中だ。そして「ホワイトハウスと上下両院を全部共和党が押さえている」という状態に、経済界は水を得た魚のごとくになっている。やはり8年間にわたるオバマ民主党政権は、彼らにとって窮屈な時代だったのであろう。
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