しかし11月6日、トランプ政権は中間選挙という形で初めての審判を受ける。世論調査を見る限り、共和党には逆風が吹いている。いや、そもそも中間選挙とは、与党側が負けるものなのだ。近年でもその例外は1998年と2002年くらい。後はだいたい政権政党側が議席数を減らしている。今回も多分そうなるだろう。
もっと言えば、「ホワイトハウスと上下両院をひとつの政党が支配している」ことはアメリカ政治ではむしろめずらしいくらいで、来年以降は「ねじれ議会」に戻ることは少しも不思議ではない。今の感じで行くと、民主党が上院の2議席差を逆転することは意外と難しいが、その代わり下院の25議席差は余裕でひっくり返しそうである。
その場合、まず下院議長が民主党に代わり、下院の委員長もすべて交代する。となると、法案の優先順位などもすべて民主党が決めることとなり、トランプさんが望むような法案の成立は望み薄となる。与野党の関係は最悪だが、それでも予算審議と債務上限問題だけは処理せねばならず、そうでないと政府閉鎖や資金ショートが起きてしまう。それ以外の課題については、「決められない政治」の時代に逆戻りする公算が大である。
中間選挙後、トランプ大統領は守勢に回る機会が増える
逆に言えば、この2年間のトランプ政治はやり過ぎるくらいに多くの懸案をこなしてきた。内政面では減税に規制緩和、通商政策ではTPP(環太平洋経済連携協定)離脱、NAFTA(北米自由貿易協定)見直し、鉄鋼アルミ追加関税と対中制裁関税。パリ協定からの離脱にイスラム圏からの入国制限。そして最高裁へは保守派の判事を2名も指名した。
外交では米朝首脳会談、シリア空爆、イラン核合意破棄、そしてイスラエルの大使館をエルサレムに移転するなど。嫌味もお世辞も抜きにして、これほどまでに公約に忠実だった大統領がかつて居ただろうか。実現していないのは、文字通りオバマケアの撤廃とメキシコ国境との「壁」建設くらいである。
逆にこの先の2年間は、トランプ大統領にとって辛抱の時期となりそうだ。面白いもので、あのトランプさんでも大統領職を2年もやると、今度は自分の実績を守る立場になる。例えば先月、再交渉が妥結したばかりの新しいNAFTA改めUSMCAは、発効させるためには議会承認を得なければならない。となると、来年は「貿易協定の利点を訴えるトランプ大統領」が見られることになる。ところがその頃には、議会は今よりも民主党議員が多くなっているし、アメリカ経済も今より減速しているかもしれないのである。
いずれにせよ、この2年間のトランプ大統領はいつも「攻める側」であった。それが任期後半の2年間は、守勢に回る機会が増えるはずである。それは支持者たちには、「俺たちのトランプが、とうとう既成秩序に取り込まれている」と映るかもしれない。逆にトランプ劇場に疲れてきた観衆としては、少し意地悪な気持ちで中間選挙以後の政局を見物したいと思っている。(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が、週末の人気レースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)。
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