結婚直前の著名ジャーナリストが「消えた」怪 サウジアラビアの辣腕皇子に疑惑の目
10月2日にトルコのサウジアラビア領事館を訪れた著名ジャーナリストが、こつ然と姿を消してから9日。このハリウッド張りの出来事が、中東での政治的な対立をさらに深めている。政権批判が理由でアメリカに事実上亡命していたジャーナリストが領事館内で殺害された可能性が高いとトルコ当局は見ている。
消えたジャーナリストはアメリカに事実上亡命していたことから、ドナルド・トランプ政権も含めたサウジアラビアとトルコの外交問題に発展しているが、サウジアラビア側は「ジャーナリストは領事館を出た」と反論。事件は迷宮入りするおそれもありそうだ。
館内で殺害後に遺体解体?
このジャーナリストはサウジアラビア国籍のジャマル・カショグジ氏。当初はサウジ王室とも関係は良好だったが、実権を握るムハンマド皇太子(33)の外交政策や経済改革の独裁的な進め方を批判して身に危険を感じ、アメリカに逃れた。アメリカのワシントン・ポスト紙でコラムニストを務め、「サウジアラビアはいつも、今のような状況ではなかったことを知ってほしい」と憂国の論陣を張り、反対意見に対する抑圧や独善的なムハンマド皇太子の政治姿勢を糾弾していた。
ポスト紙によると、トルコ人女性と婚約していたカショグジ氏は、結婚に向けサウジアラビア当局から過去の離婚証明書が必要となり、9月28日にイスタンブールのサウジアラビア領事館を訪れた後、10月2日にも再訪するよう要請されていた。
だが、領事館に入ることに身の不安を感じていたカショグジ氏は、婚約相手に何かあった場合にはトルコのエルドアン首相の側近に連絡するよう電話番号を伝えていた。領事館には女性も同行し、カショグジ氏が出てくるのを館外で待っていたが、いつまで経っても出てこなかったという。
トルコ当局は、カショグジ氏が領事館内で殺害され、遺体が解体されてトルコ国外に運び出された可能性があると見ている。トルコ当局は具体的な証拠は示していないが、カショグジ氏が行方不明になった10月2日、サウジアラビア人グループ15人の一団が空路イスタンブール入り。事件当時に領事館内にとどまり、複数の黒い箱を車に積んでその日のうちに出国したという。この15人が殺害に関与した疑惑が浮上している。
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