結婚直前の著名ジャーナリストが「消えた」怪 サウジアラビアの辣腕皇子に疑惑の目
カタールの独自外交やイランへの接近が気に入らないムハンマド皇太子は昨年6月、アラブ首長国連邦(UAE)など計4カ国とともに断交。国境封鎖でサウジからの輸入に依存していたカタールを兵糧攻めにしたが、この窮地を救ったのがトルコやイランだった。
サウジアラビアは、王制を脅かすとしてイスラム主義組織、ムスリム同胞団を弾圧しているが、この組織をトルコやカタールが支援していることも気に食わない。こうした中、トルコにある領事館を舞台にした事件について、トルコに対する嫌がらせにもなったとの見方もある。
トランプ氏とムハンマド皇太子は「べったり」
だが、今後事実解明が進むかは微妙だ。ポスト紙のほか、アメリカの議員からも解明をサウジアラビア政府に強く求めるよう声が上がるものの、独善的で予測困難な点でウマが合うと言われているトランプ氏とムハンマド皇太子は、「べったりの関係」(前出の外交筋)とされる。
実際、トランプ大統領は失踪事件について「懸念している。それについて聞くのは嫌で、問題が解決されることを願っている。今のところ、誰も何も知らない」と語ったが、いつものトランプ節に比べると歯切れが悪い。
11月上旬に中間選挙を控え、トランプ大統領は有権者へのアピールに余念がない。サウジアラビアはアメリカ軍需産業の大口顧客であり、トランプ大統領はさらなる購入額の上積みも迫っている。最近も「われわれはサウジアラビアを守っている。 われわれなしでは2週間も持たないだろう。自国の軍事力の費用を支払わなければならない」と発言し、サウジアラビア側を慌てさせた。
つまり、1人のジャーナリストの生死にこだわって2国間関係を悪化させたくないというのがトランプ大統領や外交関係者の本音だろう。こうした点で、ムハンマド皇太子は「怒らせたくない相手」と感じさせるような出来事に事欠かない。
たとえば、カナダ政府が8月初め、 サウジアラビアによる人権活動家らの拘束に懸念を表明して釈放を求めたことに対し、 サウジアラビアは「内政干渉だ」と激怒。貿易や投資の凍結や駐カナダ大使の召喚といった強硬策に出て、外交関係が極度に悪化している。
とはいえ、領事館内で反体制派が殺害されたとあっては、中東の反体制派を庇護しているトルコの威信にも傷が付く。一方、批判を強めれば、サウジアラビアが報復措置を繰り出してくる可能性もあり、トルコの通商や観光などに影響が出かねない。トルコがどこまで真相を究明できるのか微妙なところだ。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら