鎌倉の宿の主人が「鎧」を着て接客をするワケ

福祉ではなく多様な雇用創出で障害者支援

高野さんは、「イギリスなどの成熟社会ではノーマライゼーションが進み、障害者本人が希望すれば、学校や公共施設では受け入れるのが基本になっています。このことは障害者の権利保護はもちろんですが、マジョリティの側、つまり健常者にとってもメリットが大きいのです」という。

自作の武士の鎧を着用して接客する「彩 鎌倉」オーナー高野朋也さん(筆者撮影)

「今の日本では、車いすの人をはじめ障害者を見掛けても多くの人が声をかけません。健常者と障害者を分ける教育システムでは、実社会で障害者という異質な人を目にしたときにどのように接していいのかわからないのです。一緒に学ぶ時間があると、世の中にはこういうふうに生まれてきたり、事故でこうなってしまう人がいるのだということが認識され、他人に対する想像力がまったく変わってきます。障害者が一緒に学べない教育システムは、日本社会にとって大きな機会損失にほかなりません」(高野さん)

障害者就労の壁

その後、高野さんはグループホームの仕事を辞め、障害者に目を向けるようになる。そして、征人君が「彼女が欲しい」と言ったのがきっかけで、征人君とともに立ち上げたNPOで、年齢、病気、障害者手帳の有無を問わずに参加できる婚活イベント「ユニバーサル合コン(ユニコン)」を開催するようになる。

しかし、婚活イベントを開催していて疑問が浮かんだ。たしかにカップルも誕生して楽しいが、恋愛して結婚も含めた将来を考えたときに、彼らに自分たちの生活を支えるだけの十分な経済力がない。もっと本質的な、彼らが生活の糧を稼げるような活動をしなければならないのではないかということだ。

ユニコンに参加していた障害者は、障害年金のみに頼らず、働いて生計を立てたいという人が多かった。「彼らと話していると、単なるライスワーク(食うための仕事)ではなく、生きがい、やりがいから働きたいというのを強く感じました」と高野さんは話す。

だが、ここで突き当たるのが障害者就労の壁だ。厚生労働省が今年4月に公表した障害者の人数の推計はおよそ936万6000人(身体障害者:436万人、知的障害者:108万2000人、精神障害者:392万4000人)で人口の約7.4パーセントに相当する。このうち、65歳未満の人数はおよそ447万人だ。また、「平成29年版 障害者白書」(内閣府)によれば障害のある未成年者の数が約50万4000人だから、差し引くと働き世代の障害者は400万人程度いることになる。

一方、いわゆる障害者雇用枠で雇用されている障害者の数は、民間企業が49万5000人、国・都道府県等の公的機関が5万7000人、独立行政法人などが1万人で合計約56万2000人にすぎない(平成29年 障害者雇用状況の集計結果 厚労省)。障害者であることを雇用主に伝えずに一般雇用枠で働く人(クローズ就労)もいるにせよ、障害者が働くために開かれた門戸は狭いといわざるをえない。

次ページ障害者も健常者と一緒に働けることを実地で証明する
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