鎌倉の宿の主人が「鎧」を着て接客をするワケ

福祉ではなく多様な雇用創出で障害者支援

牽引式車いす補助装置を取り付けて、海辺を案内する高野さん(写真:高野さん提供)

神奈川県鎌倉市の由比ガ浜のバス通りから狭い路地を入った住宅地の中に、昨年10月にゲストハウス「彩(イロドリ) 鎌倉」がオープンした。このゲストハウスは一風変わっており、オーナーの高野朋也さん(31)はつねに自作の武士の鎧を着用して接客している。

また、築90年の古民家をバリアフリー仕様に改築し、車いす利用者など障害のある宿泊客も安心して泊まることができる「誰でも泊まれる宿」をコンセプトとする一方、総勢30人のスタッフの中にも障害者が多数いる。障害の内容もさまざまで、車いすの人や聴覚障害者のほか、境界性パーソナリティ障害、吃音(きつおん)、場面によって言葉が出なくなる場面緘黙(かんもく)などの発達障害・精神障害のあるスタッフもいる。

認知症ホームでの経験

このような変わったゲストハウスは、高野さんのこれまでの経験から生まれたという。

「彩 鎌倉」は、バス通りから路地を入った住宅地の中にある(筆者撮影)

高野さんは日本の大学卒業後、コロンビア大学大学院に留学。帰国後は、大学時代の恩師が立ち上げた英語のセルフラーニングをアシストするアプリを開発・販売する会社に就職し、海外での展示会なども担当した。留学や会社の業務で身に付けた語学スキルが、ゲストハウスを運営するようになってから役立っているという。

結局、この会社はアプリの販路開拓でつまずき解散することになり、人生の岐路に立つ。このとき、看護師だった母親の「福祉に目を向けてみては」とのアドバイスもあり、認知症の高齢者が共同生活を送るグループホームで働きながら、福祉系の資格を取得する道を選んだ。

このグループホームは個室制で中央に皆で使える共同スペースがあったが、高齢の女性が中心の入所者は覇気がなく、個室から出てくる人はまれだった。

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