ドコモは「三河屋」のようなサービスを目指す 加藤薫社長にスマホ時代の新戦略を聞いた

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――サービス関連の買収は増えていきますか。

もちろん。ドコモ単独でできることは少ない。たとえば、デジタルコンテンツは権利処理の仕組みが非常に複雑だ。他社と組むことで、まとめて作品を供給できる。最近はマガシーク、ABCのように買収・子会社化しているが、子会社が目的ではない。ABCとも、当初は業務提携し、両社でシナジーを検証してきた結果、子会社化することになった。買収するケースもあるかもしれないが、全体でみれば少ないと思う。

――中長期の成長戦略も、サービスが中心ですか。

その通りだ。音声通話の収入はまだ減少していくだろう。スマホで色々なことができるようになり、通話時間が減っているからだ。そもそも、日本人はアメリカ人の4分の1程度しか通話していない。アメリカ人は月に400分もしゃべるが、日本は100分程度。もしもしの通話とメールだけでは成長できない。

ライバル他社もサービスによる差別化を進めているが、ドコモはサービスの分野で先行しており、安心・安全が強みだ。「ドコモがやっているサービスなら間違いない」というイメージは、ユーザーだけでなく、パートナー企業にとっても重要なこと。料金などの競争はすぐに後追いできるが、サービスはそうはいかない。切磋琢磨してやっていける、本来の意味での競争だろう。サービスはこれからキャリアフリー化して、ドコモ以外の他社ユーザーも使えるようにしていく。これは本気でやる。

さらには海外展開も狙っている。たとえば、アニメはクールジャパンの象徴だ。夏にフランスと台湾でコンテンツ配信の実験をした。モバイルではなくパソコン向けの配信だったが、手応えはあった。現地の言語に吹き替えする作業などが障壁となるが、ノウハウを蓄積できれば一気に加速できるだろう。欧州では伊ボンジョルノとか独ネットモバイルというコンテンツ配信の子会社があるので、どのタイミングで始めるか検討中だ。

海外でのM&Aも常に検討

――海外事業者の買収については?

いつでも検討している。いい案件があればぜひというスタンスだ。ただ、現段階では、検討している件数を見ても、国内向けサービスに関連した案件のほうが多い。ドカンと買収するのがあってもいいが、そうした形で成長するより、既存のユーザーによりよいサービスを展開していきたい。

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