コンゴの性暴力を止める責任は日本にもある ノーベル受賞医師はなぜ闘う必要があるのか
紛争によって20年間で600万人もの命が失われてきたコンゴ民主共和国。残念ながら、日本人のコンゴ問題に対する関心は低い。だが、日本で暮らす我々一般市民も、実はコンゴ問題と身近なところで関わっている。
コンゴは世界有数の資源産出国であり、コバルト、ダイヤモンド、銅、金、レアメタルなどの鉱物が産出される。そして、この鉱物資源のために、コンゴでは争いが絶えない。その結果として、産出地域の住民に性暴力という人権侵害をもたらされているのである。
こうした地域で産出された資源は巡り巡って、電子機器や携帯電話などの原料という形で我々日本人の生活に便利さをもたらしている。2016年10月に東京大学で講演した際、ムクウェゲ医師はこのように呼びかけた。
「私たちは、消費者として、私たちが買う商品のなかにどのようなものが使われ、どのようなところからきているのかを確認する責務があります。それが、女性の破壊、人権侵害を経て作られたものでないかどうかを、販売する人に尋ねて確認して買うことが必要です」
資源大国なのに最貧国
1996年に始まる2度のコンゴ紛争は、2003年に公式には「終結」したとされている。しかし、コンゴ東部では複数の武装勢力がその後も活動を続け、紛争主体の数は2012年時点で40を超え、2015年には70に増えている。加えて、コンゴ国軍の中にも住民への人権侵害に関与する部隊や兵士がいる。隣国ルワンダとウガンダの関与も疑われている。
こうした紛争主体が資金源として利用しているのが鉱物であり、それは「紛争鉱物」とも呼ばれる。武装勢力や軍は、主にスズ、タンタル、タングステン、金(以下、3TG)の鉱山を実効支配し、周辺の村を襲撃して住民を殺害したり過酷な鉱山労働に就かせたりして、採掘した鉱物を密輸して紛争資金を得ている。
採掘された鉱石は、他の地域の鉱石と混ざって、携帯電話やパソコンなどの電子機器を中心とする多様な工業製品の原料となり、世界中に輸出されている。にもかかわらず、コンゴは人間開発指数(HDI)で188カ国中178位の最貧国であり、豊富な資源が住民の豊かさに結びついていない。「コンゴは扉も窓もない宝石店のようなもの」とムクウェゲ医師はたとえる。
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