コンゴの性暴力を止める責任は日本にもある ノーベル受賞医師はなぜ闘う必要があるのか

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紛争鉱物調達調査には困難がともなうために、最上流であるコンゴ東部の鉱山周辺で直接、紛争フリー鉱山からの購入(Boycottに対してBuycottとよばれる)や住民支援を行うことで問題解決を導こうとする動きが見られる。これが第3の取り組みである。

情報機器企業のMotorola Solutionsとタンタル・コンデンサー製造企業のAVX(京セラの関連会社)は、2011年にSolutions for Hopeプログラムを立ち上げ、紛争フリーの認証を受けたタンタル鉱山と直接契約を結んで鉱物を調達する取り組みを始めた。

暴力は悪化した

それでは、取り組み強化によって紛争鉱物問題は解決したのであろうか。残念ながら、答えはノーである。

確かに、鉱山からの武装勢力の撤退、という点においては、一定の効果が見られる。2419カ所の鉱山を調査したInternational Peace Information Service(IPIS)によれば、3TG鉱山の80%以上から、武装勢力や軍が撤退した。

しかしその一方で、ノルウェーのオスロ平和研究所のArmed Conflict Location and Event Data(ACLED)によれば、2010年以降には武力衝突や市民への暴力が増えている。2017年には1021件の事件が起こり、3168名が犠牲となった。さらに、国連人口基金(UNFPA)の報告によれば、性暴力の被害は2016年の2593件から2017年の5783件に倍増している。

なぜ、規制の制定後にむしろ暴力が悪化したのか。その原因は、コンゴのカビラ大統領が実施した鉱物禁輸にある。

2010年7月にアメリカでドッド・フランク法1502条が制定されると、カビラ大統領は9月に大統領令を発し、東部の紛争地域である北キヴ州、南キヴ州、マニエマ州からの鉱物輸出を停止した。翌2011年3月までの禁輸期間に、当該3州では鉱物の価格が下落した。

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