フェンシング2.0に挑む会長・太田雄貴の奮闘

スポーツ界をいかにしてアップデートするか

今年8月に就任2年目を迎えた太田は、昨年に続いて全日本選手権での集客に挑んだ。ポスター制作には、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の理事にも名を連ねる映画監督・写真家の蜷川実花氏を起用し、世間の関心をフェンシングに集めることに成功。

さらに、昨年のアンケートで伸びしろとして期待された観戦価値の向上という課題にも着手した。

太田が出した答えは、東京グローブ座で全日本選手権を行うことだった。

東京グローブ座は、ロンドンのグローブ座の構造を参考に設計され、中央の舞台を円筒状の客席で囲むような造りで、主に舞台公演で使われる。

太田が東京グローブ座を選んだ2つの理由

太田がこの会場を選んだのには主に2つの理由があった。1つは、700人という小さなキャパシティだ。これによりフェンシングファンには、“今年の全日本選手権はチケットが取れないかもしれない”という心理も生まれた。昨年の入場者数が1600人のため、今年のチケット倍率は単純計算しても2倍以上と推測される。

もう1つの狙いが、スポーツをエンターテインメント化することによる、客単価の向上と非日常体験の提供だ。

常識的に考えれば、昨年まで1000円だったチケットを倍以上の価格に変更するのは、公演の内容に大きな変化がない限り、ファンは納得しないだろう。

太田は自らの意図をこのように述べる。

いかにエンターテインメント性を高めるかを語った太田会長(撮影:今井康一)

「どこかでブレークスルーさせたいと思っていました。普段、コンサートや劇団四季のようなミュージカルを観に行く人は、1万円を支払うことに対して、抵抗はないわけです。

そこに1万円の価値があると感じているから。

一方で、スポーツとなると、どうしても受益者負担がない世界になってしまう。1000円では僕らはいつまで経っても収益化できない。

だから、スポーツとしてのフェンシングからアート・芸術の世界に進化させたかったというのがあります。同じスポーツの土俵では勝てないなら、早めにこっち(アート・芸術)にもっていくというのが、ポイントだと思っています」

スポーツという公共性がゆえに、消費者に負担を求められないという現状に疑問を持った太田は、スポーツをエンターテインメント化して、興行としての収益性を高めることを狙った。たとえば、体育館のような公共施設では、音響や照明に制約があったり、飲食が禁止だったりと、観客がエンターテインメントを楽しむことを念頭においた設計はされていないことが多い。

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