フェンシング2.0に挑む会長・太田雄貴の奮闘 スポーツ界をいかにしてアップデートするか

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協会には、その競技団体がどこを目指していくのかを決め、皆の進むべき場所へ導く役割がある。その役割を果たすべく、日本フェンシング協会は現在、ビズリーチのHPで、副業・兼業限定で、ビジネスプロフェッショナルな人材を募集している。

ベンチャースポーツとして再生していく意思

スポーツ界は人材不足と言われて久しい。だが、スポーツ界にかかわりたい、スポーツ界に貢献したいという学生やビジネスパーソンは、実はたくさんいる。この矛盾についても、太田は指摘する。

「推測ですが、優秀なビジネス人材を受け入れきれないんですよ。だから優秀な人たちは協会に見切りをつけて、またビジネスの世界に戻ってしまう。この前も、フェンシング経験者の方で、大手企業の役員の方が2人いたんですよ。

だから、言いました。“なんで今まで黙ってたんですか。何ですか、その隠れフェンサーみたいなのは!(笑)”って」

このエピソードは、多くのスポーツ競技団体は、優秀なビジネス人材を受け入れる準備ができていないことを示している。そして、ビジネスパーソン側もスポーツ界に自分が受け入れられないということを知っているのだ。

太田雄貴(おおた・ゆうき)/国際フェンシング連盟理事、公益社団法人日本フェンシング協会会長。1985年生まれ。同志社大学出身。2015年、フェンシング世界選手権で個人金メダル獲得をはじめ、北京五輪(2008)でも銀メダルを獲得。2017年8月日本フェンシング協会会長に就任(撮影:今井康一)

それでもフェンシング協会は、改革を加速させるために、協会トップ自らが、人材を求めた。

そして、意思決定とその執行に組み込むポジションを用意したことは、マイナースポーツ競技団体の施策としては、画期的なことではないだろうか。

取材中、太田は、フェンシングのことを、「ベンチャースポーツ」と表現していた。

この言葉は、2020年のその先の未来へ向けて、フェンシング界が機動力を持って進んでいくことを示唆する言葉だ。

「もう1回再生していく。使えるものは全部使って、フェンシングという競技をアップデートしていきたい。改革を成功させて、スポーツ界のロールモデルになっていきたい」

トップが変われば、スポーツ競技団体はこんなにも変わる。この取り組みを推し進めた先に、日本スポーツ界の明るい未来が見え隠れする。

今後も、太田雄貴の動向からますます目が離せなくなってきた。

(文中一部敬称略)

瀬川 泰祐 ライター

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せがわ たいすけ / Taisuke Segawa

1973年生まれ。北海道出身。エンタメ業界やWeb業界での経験を活かし2016年よりフットサルを中心にスポーツ分野のライティング活動を始めている。モットーは、「スポーツで繋がる縁を大切に」。

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