吉野家が「6期ぶりの赤字」に陥る根本理由 客数増加でも、最終損益が11億円の赤字に…
こうしたコスト増を受け、外食各社では値上げが相次ぐ。鳥貴族が2017年10月に1品280円均一から298円に引き上げたほか、同じ牛丼チェーンのすき家が2017年11月に、松屋が2018年4月にそれぞれ原材料価格や人件費の上昇を理由に値上げに踏み切った。
過去の値上げがトラウマ?
だが、吉野家では簡単に値上げできない事情がある。同社は2014年12月、原材料である北米産牛肉のショートプレートの高騰を理由に、牛丼並盛の価格を税込み300円から同380円へと引き上げた。すると客数が15%ほど落ち込み、回復に長い時間を要した。
吉野家ホールディングスの河村泰貴社長は4月の決算会見で「牛丼は日常食なので客は10円、20円でも敏感に反応する。牛丼の値上げは検討していない」と話したが、過去の値上げによる客離れが"トラウマ"となっている面があるようだ。
同社も手をこまぬいているわけではない。省人化や生産性向上への投資には積極的だ。郊外型の店舗では、食器を格納するロボットを導入した自動食器洗浄ラインを投入。店長に代わってAIがシフトを作成するソフトウェアを、警備会社のセコムなどと共同開発した。今年度に入って埼玉県の店舗で実験を進めている。
とはいえ、こうした実験は緒についたばかり。ノウハウを蓄積し、大きな効果を生み出すにはまだ時間がかかる。価格を据え置いて客数を確保するか、それとも値上げに踏み切るか。さまざまなコストが上昇傾向にある中、吉野家ホールディングスの経営陣は難しい舵取りを迫られている。
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