アーモンドアイの魅力は強烈な瞬発力だ。乗り手の合図にこたえて速い脚を繰り出す。反応の良さが持ち味だ。桜花賞とオークスの直線での映像をじっくり見てほしい。アーモンドアイは手前を替えまくる。馬が走る時に右前肢を左前肢より常に前に出して走ることを「右手前」、左前肢を右前肢より常に前に出して走ることを「左手前」という。コーナーを回る時、右回りなら「右手前」、左回りなら「左手前」で走る。
だから、コーナーを回って直線に向いた時は右回りなら「左手前」、左回りなら「右手前」に替える。馬によってどちらかの手前で走る方が得意という場合もあるが、上手に手前を替えて走らないと脚に負担がかかり走りのバランスも悪くなる。ところがアーモンドアイはコーナーを回った後、直線で遊んでいるかのように手前を何度も替える。こんな馬は過去の名馬でもあまり見たことがない。集中していないのか。まだまだ余力があるのか。
木實谷場長に聞いたところ「反応の良さだと思う。鞍上のバランスなどで馬が反応して手前を替えているのではないか」と分析してくれた。フォームも型破り。筆者の今までの常識では計り知れない馬だという印象を持っている。
国枝調教師は過去にどんな調教をしてきたのか
国枝調教師はかつてアパパネを管理して牝馬3冠を制している。JRAの調教師として空前となる2頭目の牝馬3冠を達成する偉業に挑んでいる。当時、国枝調教師は「栗東留学」にこだわった。メジロラモーヌの1986年まで桜花賞は関東馬と関西馬が23勝23敗で互角。ところが、そこから関西馬は17連勝を含めてアパパネが勝つ2010年の前年まで関西馬が21勝2敗と圧倒していた。繊細な牝馬は関西への長距離輸送の影響が大きいと見られていた。
しかし、国枝調教師はそれだけではないと考えていた。坂路の長さも勾配も栗東の方が馬を鍛えるには充実していた。アパパネは栗東の坂路で追われて阪神JFも桜花賞も秋華賞も制した。加えて、アパパネは秋華賞前にローズSにも出走した。夏場に成長したアパパネは馬体が大きく増えていた。「秋華賞にいい状態で臨むためにはローズSをひとたたきする必要があった」と振り返る。
24キロ増で臨んだローズSでは4着に敗れたが、本番の秋華賞では4キロ絞れて本来の姿を取り戻した。アパパネはほとんど放牧に出さずに手元に置いて調整していた。
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