「オーバースペック上司」に苦しむ部下の悲鳴 同じ部門にずっといる上司が「無双」に

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上司は適切な指導ができる立場であるべきですが、部下のキャパシティを超えた指導は避けるべきです。無双な上司に困る部下を生み出さないために、筆者は部下を指導する立場にある管理職については、一定の人事異動が必要ではないかと考えます。

人事異動があまりない状態になると、すべての管理職がそうとまでは言えませんが、指導法は独善的になりがちです。そこで人事異動を経験して新しい組織、新しい部下とのかかわりから新鮮な気づきを得ることが大切ではないでしょうか。ちなみに人事異動にもいくつかのパターンがあります。同じ部門で勤務地が変わる転勤、子会社などで勤務する出向。所属部署を変更する部署異動など。ちなみに人事異動により自分の能力が向上したと感じる人は7割以上との結果が出ています。

ぐったりした部下たちと誇らしげな所長

筆者が取材していて、その部門での勤務が10年以上などと長すぎると「無双状態」になっているのでは?と感じる管理職に遭遇する確率が高いと感じます。たとえば、ある医療機器商社で、同じ営業所に勤務して20年以上の所長が仕切る営業会議に参加したときのこと。

「この病院で購入している医療機器でリース切れになるものをすべてあげてみて」

と部下に問いただしている場面に遭遇しました。所長は10年以上担当しているので、すぐに回答できますが、部下は「わかりません」としか言えませんでした。その回答に対して、

「担当している病院の状況は十分に把握するように言っているじゃないか」

ときつい言葉を返します。ただ、あとで聞いたのですが、この営業担当は配属されて半年。担当している病院は50件にもなります。経験の長いあなたには当然わかっても、配属された半年の人にはわからないですよ……と弁護してあげたくなりましたが、その後も容赦なく厳しい指導が続きました。会議の終了後にはぐったりした部下たちと誇らしげな所長の姿が印象に残りました。ちなみに中小企業だと人事異動は簡単にはできないかもしれません。そんなときにはどうしたらいいのか? 経験豊富で自信満々ゆえの指導に潜んだ弊害に気づかせる質問を会社がぶつけることかもしれません。前提として、

「君の経験に裏付けられた指導力はすばらしい」

と称えつつも、同じ能力の管理職を育てることはできるのか?無理だとすれば、会社はどのような上司を育てるべきなのか?を無双な上司に問うていくのです。無双な存在とは会社にとって有益ではなくオーバースペックであることに気づく可能性が高いと思います。ちなみにオーバースペックとは過剰な性能と言う意味。正しすぎる指導はまさに過剰な性能=スキルであると認識させるのです。さて、このような無双な上司は部下にとって困った存在であり、部下が活躍しにくいという点で、会社全体にとっても悪い影響をもたらす可能性があります。もし、上司にあたる人が、こうした「困った無双」になってしまっている場合は、早めの人事異動で新たな気づきを提供するのがいいのではないでしょうか。

高城 幸司 株式会社セレブレイン社長

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たかぎ こうじ / Kouji Takagi

1964年10月21日、東京都生まれ。1986年同志社大学文学部卒業後、リクルートに入社。6期トップセールスに輝き、社内で創業以来歴史に残る「伝説のトップセールスマン」と呼ばれる。また、当時の活躍を書いたビジネス書は10万部を超えるベストセラーとなった。1996年には日本初の独立/起業の情報誌『アントレ』を立ち上げ、事業部長、編集長を経験。その後、株式会社セレブレイン社長に就任。その他、講演活動やラジオパーソナリティとして多くのタレント・経営者との接点を広げている。著書に『トップ営業のフレームワーク 売るための行動パターンと仕組み化・習慣化』(東洋経済新報社刊)など。

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