40代で突如、主夫になった男性の「運命の妻」 海外赴任しバリバリ働いていた人の「大転換」

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「それまでの私は『誰と結婚しても同じだ』と達観していました。でも、それはウソだと妻と出会ってわかったんです。私にとってこんなに理想的な女性がこの世にいるとは知りませんでした」

ベタぼれである。運命的な出会いなのではなく、真弓さんとの結婚生活とその破綻という比較対象があるからこその感動なのだと筆者は思う。離婚経験も「次」に生かせば無駄にはならない。

男性全般が苦手らしい美知子さんも、女性的な雰囲気の純一さんには心を開いてくれた。そして、結婚する唯一の条件が「不妊治療をしてでも子どもを作る」ことだった。

「今では私も息子をかわいがっていますよ。一緒にいる時間は私のほうが圧倒的に長いので、私のほうに懐いています。『パパが入れてくれたジュースじゃなくちゃ嫌!』と駄々をこねて妻を悲しませているぐらいです(笑)。でも、私としてはすべて妻のためにやっていること。結婚式もしたし、指輪も買いました 」

子どもよりも妻が大事。結果として美知子さんも息子も機嫌よく暮らせるのであれば、純一さんの優先順位は問題にはならない。

「私はよく『自分好き』の人間だと指摘されますし、自分でもそう思っていました。でも、今は妻の幸せが私のいちばんの幸せだと思えます。この気持ちは6年間まったく変わっていません。仕事を辞めたのも、子育てと家事の大半を引き受けているのも、妥協ではありません。それが当たり前なのです。そんな自分にびっくりしています」

結婚相手次第で人はここまで変わる

まじめすぎて自分を追い込んでしまうこともあった美知子さんは、のん気な純一さんと愛する息子に囲まれて精神的にも安定した。その姿を見ることが純一さんの何よりの喜びだ。

ちなみに観劇などの遊興費は、妻の稼ぎから出ているわけではなく、純一さんがやる株のスイングトレードとメルカリの売買で捻出できているらしい。純一さんは頭が良く、「お金はその気になればいつでも稼げる」という自信があるのだろう。実際、今でも以前に働いていた企業などから職場復帰を乞われている。

「いずれはちゃんとお金を稼ぐ必要が出てくると思いますが、東京では私のスキルを十分に生かせる仕事はありません。とても限られた分野でのスキルだからです」

美知子さんは純一さんの再就職に関しては何も言わない。「あなたが働きたくないところに就職しなくていい」という大らかな態度だ。美知子さん自身がいわゆるバリキャリであり、家族3人を養っていけるだけの収入があることも余裕につながっているのだろう。

かつて子どもが好きではなく、趣味に生きていた純一さんが、今では子煩悩の愛妻家として専業主夫をしている。結婚相手次第で人はここまで変わるのだ。いや、純一さん自体は変わっていない。美知子さんとの結婚生活という環境によって、純一さんの中に眠っていた愛情深くて家事も得意な部分が覚醒したのだと思う。

純一さんのようにユニークで賢い父親に育ててもらった経験は息子にとっても大きな財産となるかもしれない 。キャリアをあきらめることなく温かい家庭を持つことができた美知子さんも、純一さんとの生活を楽しんでいるに違いない。 他人も自分も幸せにするような結婚をしたいものだ 。

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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