部下を自慢するリーダーが「最強」である理由 人は「建前では動かない」という重要な真理

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私の謹慎中に、取引先銀行の支店長が本社に来て、対応した滝石洋子部長(現・常務取締役)が、

「小山は、酒席に同席していたため、わが社のルールに従って2日間の自宅謹慎中です。出社しておりません」

と事情を説明しました。すると面白いことに、その銀行から融資を受けられることになったのです。

•「社長が、率先して会社のルールを守り、罰を受けている」
•「社長も、社員も、決められたことを、決められた通りに実行している」

ことが評価された結果です。

ルールは明確で平等であるべき

普通、社長は、自分で決めたルールを自ら破ります。「酒席の同席者も自宅謹慎」と社員には通達しておきながら、いざ自分がその場に居合わせると、なんのかんのと言い訳をします。すると、社員はどう思うか。

「いくら社長とはいえ、守らないのはずるい」

そう思います。それを放置しておくと、今度は古参の社員が「オレは会社のベテランだ。社長が見逃してもらえるのなら、幹部のオレだって」と言い出す。これでは規律が守られません。

ですが、武蔵野は、社長が率先してルールに従う会社です。

「社長だってルールに従わなければ、罰せられる」

そう知れば、ルールに文句を言う人がいなくなり、みんながルールを守ります。ルールは、明確で平等であることが大事です。

問題3 どちらのリーダーに部下はついていきたくなるのか?
1. 飲み会で自分自身の成果を参加者に披露するリーダー
2. 飲み会で部下のことを褒めるリーダー

武蔵野には、グループ懇親会という飲み会があります。この飲み会では、「チェックイン」といって、はじめに、参加者が1人1分で話をするのが決まりです。ただし、「1分過ぎると1000円、懇親会に寄付する」ルールです。

以前、グループ懇親会に参加したダスキンの統括本部長は、課長時代、最初から3000円を握りしめていたことがありました。最初から寄付金を払う前提で、1分以上、彼が話したかった内容とは、何だと思いますか?

それは、「自分の部下を自慢すること」です。

寄付金を払ってまで、部下を自慢する上司を見たら、彼の部下は「頑張ろう」と思います。「1000円払うのは損」と思っている社員は、出世しない。この場は、「私の部下はこんなに頑張っている」と、社長に認めさせる千載一遇のチャンスです。

反対に、「自分の自慢」しかしない上司に、部下は心を開きません。

部下がいちばん嫌がるのは、「社長や役職者が自説を語ること」です。聞きたくないことを延々と語られる飲み会なんて、2時間もいたら苦痛以外の何ものでもない。ある意味、拷問と同じです。

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