若者が来ない!「自衛隊員募集」の深刻現場 ネットやアニメで募集活動を強化するが…
軍事組織とジェンダーに関する著書のある佐藤文香・一橋大学大学院教授は、自衛隊の募集対象年齢引き上げは「危機感の表れと受け止めて間違いない」とした上で、階級の低い、若い自衛官の充足率が低いことが問題だと指摘する。
自衛隊は一定期間で若い隊員が入れ替わるよう任期制を導入したものの、数年で終わる制度では若い人にとっては魅力がなく、採用がうまくいかなかったと佐藤氏は指摘する。
そこで今回、対象年齢を引き上げて「たくさんの人に来てもらおうという戦略」を打ち出したと分析する。
これに対し、防衛省人事教育局の廣瀬律子人事計画・補任課長は「若ければ若いほど強いという考えをとった時もあったが、海外でのオペレーションもあり、最先端の装備も入ってきているので、どちらかというと、経験、技能の方がより、今の自衛隊には必要なのではないか」という考えから、「間口を広げよう」としたものだと説明している。
女性の活用
もう一つの隊員増強策が、女性隊員の活用だ。防衛省は昨年4月に「女性自衛官活躍推進イニシアティブ」を発表。女性に対する配置制限を撤廃し「あらゆる分野で活躍する機会が開かれる」こととした。
2017年度に6.5%だった女性自衛官の比率を、2030年までに9%以上とする目標も公表した。これらを受け、8月には航空自衛隊で初の女性戦闘機操縦士が誕生した。
また、陸上自衛隊幕僚監部によると、女性自衛官の増員に向けた居住施設などの整備を進めるとともに、家庭と仕事の両立ができるよう、育児休暇後に復職しやすい制度や、緊急呼び出しの際の託児所の設置にも取り組んでいるとしている。
ただ、目標とされる9%はまだまだ低いとの見方もある。米国の女性兵士の割合は15%程度。一橋大学の佐藤教授は、配置制限が撤廃されたといっても「いわゆる『女性らしい』配置につける傾向は変わっていない」と分析する。