「信用審査・AI・融資」5年後あなたも体験する 金融業務のみならず経済・社会を変える
貸付審査は、単純業務でなく、専門的知識と判断が必要といわれてきた業務です。それが自動化されると、金融機関の性格は大きく変わります。究極的には、貸付業務がAIにとって代わられる可能性さえあります。
そうなれば、大量の失業が発生する可能性も否定できません。
Q:AIによる融資審査の実例にはどんなものがありますか?
アメリカでは、多数のベンチャー企業が、AIスコア・レンディングのサービスを提供し始めています。
Avantは、ビッグデータと機械学習を用いた貸出を行っています。2017年のフィンテック100(世界の最も優れたフィンテック関連企業のリスト)で、世界第5位に選ばれました。
SoFiは、2011年にスタンフォード大学ビジネススクールの学生が立ち上げた会社です。大学卒業生らによる出資でファンドを組成し、それを原資に学生にリファイナンス(借り換え)のための資金を提供してきました。
アメリカでは、学生ローンの約9割が連邦政府による貸付なのですが、これをより低い金利のローンに借り換えることができます。
これまでの貸出では見過ごされていたパターンを見いだすアルゴリズム(計算方法)を開発しました。また、固定費がかかる店舗を持たず、借入の申し込みをオンラインで行うため、業務が効率化されています。このため、SoFiのリファイナンスで利率が下がるのです。
同社は、2017年のフィンテック100で、世界第11位に選ばれました。非上場ですが企業価値は40億ドル以上であるとされ、新規株式公開(IPO)の候補として注目されています。
Upstartは、若い人向けの信用度を、教育、学習分野、SAT(大学進学希望者を対象とした共通試験)やGPA(高校や大学での成績の平均値)のスコア、就業履歴などのデータを用いて算出します。1000ドルから5万ドルの貸出を、数分間で決定します。
ZestFinanceは、信用履歴のない人を対象に機械学習によって信用スコアを計算します。
中国でも始まった個人の信用度をAIで算出する試み
Q:中国でのAIによる融資審査の実例にはどんなものがありますか?
中国でも、融資判断に用いる個人の信用度をAIで算出する試みが始まっています。
IT大手アリババの子会社、蚂蚁金服(アント・フィナンシャル)のグループ会社が、2015年1月に「芝麻(ゴマ)信用」を始めました。これは、さまざまな指標の組み合わせで信用度を計算し評価するものです。アント・フィナンシャルは、2017年のフィンテック100で、世界第1位になっています。
これを活用したビジネスコンサルティングなどの業務も行っています。芝麻信用のスコアだけを用いて無担保融資をする業者も出てきています。
芝麻信用が信用度を数値化できるのは、アリババ・グループのサービスや提携サービスの使用状況など、大量の個人データを持っているからです。
年齢、学歴、職業などのほかに、次のようなデータが分析に用いられているとされます。
電子マネー「アリペイ」の決済履歴、公共料金の支払い履歴、ネットショッピングでの購入履歴、シェアリング・エコノミーサービスでの評価、保有金融資産の価値、SNSなどでの交流関係、趣味嗜好や生活での行動など。
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