「信用審査・AI・融資」5年後あなたも体験する 金融業務のみならず経済・社会を変える

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対面が当たり前だった業務がどんどん自動化されていきます(写真:ふじよ / PIXTA)
いま、AI(人工知能)を金融に応用する試みが、急速に進展している。従来のフィンテックと異なり、この革命的な技術は、金融業務を変えるにとどまらず、仕組みそのものや経済・社会のルールを根本から覆すほどの変化をもたらすと言われている。しかし、こうした劇的な変化の予兆に、まだ世間一般の人々は気づいていない。
そんなAIによって激変する経済と社会の未来図を、一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏が、Q&A形式でわかりやすくまとめた『入門 AIと金融の未来』から一部を抜粋する。

融資の判断に必要な信用度をAIが算出

Q:AIによる信用審査とは何ですか?

AIの金融業務への応用の1つとして、融資審査に用いる「信用度スコア」(クレジットスコア)が注目されています。データから、特定の個人あるいは企業の信用度を推測しようというものです。

これは、「AIスコア・レンディング」と呼ばれています。融資の判断に必要な信用度をAIが算出し、個人や企業向け融資の審査を人間に代わって行おうとするものです。

これには、「プロファイリング」の技術を用います。これは、AIがビッグデータを分析して個人の人物像を描き出す技術です。

Q:AIによる信用審査は、金融機関やそこで働く人には、どのような影響があるのでしょうか?

審査の仕事は銀行の業務の中で最も重要なものの1つなので、これをAIが行うことの意味は、大変大きいと考えられます。

これまで人間が行ってきた審査が自動化されれば、融資の決定が透明化されて効率化します。また、信用度を正確に評価できるようになれば、貸し倒れ損失が少なくなるため、金融機関の業務は効率化されるでしょう。

さらに、これによって、銀行が新しいビジネスを展開することも可能です。

これまでの銀行の融資は、担保主義を基本にしてきました。これに対して、金融庁は無担保・無保証融資や、新規事業に対する積極的な融資が必要であるとしています。しかしこれらは貸出リスクが大きい(貸し倒れの危険が大きい)ため、なかなか実現しません。

AIによる信用度評価を精密にできるようになれば、現状を克服し、新しい融資対象を開発したり、新規事業に対する積極的な融資を推進したりすることが可能になるでしょう。ベンチャー企業による個人間融資(P2Pレンディング)も行われるでしょう。

経済全体として見た場合には、現在より資源が適正に配分されることになり、それによって経済成長が促進されることが期待されます。

他方で、問題を引き起こすことも事実です。

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