アメリカは日本よりも金融危機に楽観的だ

何という立場の逆転であろうか。1997年に日本が金融危機に陥ったとき、ハーバード大学法科大学院の専門家グループが日米の金融政策の担当者をマサチューセッツ州の避暑地ケープコッドに集め、秘密の会合を開いた。それから11年後、10月24~26日に箱根で開催された第11回日米金融シンポジウムの討論は、米国の金融危機に集中した。

多くの出席者は、米政府が“失われた10年”のときの日本政府よりも迅速に対応したことを歓迎していた。日本の有力な銀行幹部は、不良融資問題を解決するために日本政府がとった10の対策を列挙し、米政府はすでにそのうちの8・5の対策を講じていると数え上げた。

それにもかかわらず、米政府が最も緊急な問題を解決する対策をとったと信じている人はいなかった。ある著名なウォール街の金融家は、住宅抵当証券に投資をしていない健全なGEキャピタルですら、従来どおりの期間と金利でCP(商業手形)を発行できなくなっていると語っていた。ある日本の証券会社の幹部は、本国の投資家の資金引き揚げに対応する現金を調達するために米国の投資ファンドが日本株を売っており、そのために日本株が下落していると苦言を呈していた。

参加者の多くは、パニックを早急に解決しないと深刻なリセッションに陥るとして意見が一致していた。しかし、50名の日本側出席者のうち誰一人として、今までの対策がパニックを阻止するのに十分であると考えている者はいなかった。米政府が今後1カ月のうちに十分な追加措置を講ずると思っている者もいなかった。米国側出席者は、もう少し楽観的であった。出席者の4分の1が今までの対策は十分であったと考え、3分の2が米政府は1カ月以内にさらに対策を講じると予想していた。

さらに危機の原因と将来、同様の危機が再発しないために何が必要かをめぐって議論が行われた。そして11月15日にワシントンで開かれる金融危機サミットの前に参加国政府に提出する対策の提言が作成された。

企業倫理の対応めぐり価値観の違いが如実に

議論は極めてテクニカルなものだった。たとえば、多くの人は、リーマン・ブラザーズの破綻やAIGの経営危機に関連するCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)などのデリバティブ商品は、株式と同じように証券取引所で取引されるのであれば、それほどリスキーなものでないと考えていた。公開市場で取引されていれば、投資家は取引相手と相対(あいたい)取引をし、その取引相手が破綻したら巨額の損失を被るというリスクにさらされることはなかったかもしれない。こうした“取引相手の倒産リスク”に対するおそれが、リーマン・ブラザーズとAIG問題の後に金融パニックを引き起こした要因の一つであった。

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