研究などを通じて、論理的な思考力が身についている理系人材は、求人市場でも引っ張りだこ。そうした状況を背景に、ランキング上位には、4位の豊田工業大学や5位の名古屋工業大学、7位の東京理科大学、8位の電気通信大学、12位の九州工業大学、15位の豊橋技術科学大学、17位の芝浦工業大学など、数多くの工科系大学が入っている。
メガバンクの採用減少に伴って、女子の就職先の選択肢が狭まる中、3位の国際教養大学は、女子学生の割合が高い大学にも関わらず、前年の実就職率を6.2ポイント上回る44.0%となり、昨年の5位から順位を上げた。1年次に外国人学生と寮生活を行い、海外留学が必須の同大は、ソニーやアシックス、京セラなどグローバル展開をしている企業の就職者が多い。一方で、国内勤務が中心のメガバンクに就職する学生は少ないため、それが実就職率と順位を上げた要因になっているようだ。
日本語と英語のバイリンガル環境で授業を行い、海外からの留学生が多い25位の国際基督教大学も、就職者数が多い企業に、アクセンチュアや日本アイ・ビー・エムなど世界展開する企業が並ぶ。もともと3大メガバンクの就職者が少なく、採用減の影響を受けない同大の実就職率は、前年を2.6ポイント上回る28.3%で、昨年の35位から順位を上げた。
大規模総合大学を見ると、私立大学では、6位の早稲田大学が前年の7位から順位をアップ。就職者の上位企業を見ると、2017年はみずほフィナンシャルグループ(109人)、三菱UFJ銀行(105人)、東京海上日動火災保険(81人)から、2018年は、富士通(87人)、みずほフィナンシャルグループ(87人)、東京海上日動火災保険(82人)となった。400社の実就職率は昨年と変わらないが、メガバンクの就職者が減少している。
グローバル企業への就職が強い大学が浮上
早稲田大学以外の私立難関総合大学の状況をみると、昨年3位の慶應義塾大学は、2人以下の就職者数非公表のため、ランキングに登場しない。13位の上智大学はメガバンクの就職者が前年並みだが、実就職率が前年を4.8ポイント下回る33.5%となり、前年の4位から順位を下げた。18位の青山学院大学は、三菱UFJ銀行と三井住友銀行の就職者が減ったが、みずほフィナンシャルグループが昨年を上回った。日本生命保険など大手生保が増えたこともあり、実就職率は前年を1.9ポイント上回る30.9%となり、昨年の23位から順位を上げた。
文系の定員が多く、メガバンクの採用減の影響を受けやすい私立大学は、実就職率を下げる大学が少なくない。24位の明治大学が微増のほかは、19位の同志社大学や26位の学習院大学、29位の関西学院大学、32位の立教大学、38位の立命館大学などが前年の実就職率を下回っている。
国立の難関総合大学では、大阪大学が昨年とほぼ同じ実就職率35.8%で9位。就職者が多い企業は、三菱電機(61人)、パナソニック(48人)、ダイキン工業(40人)などとなっている。大阪大学に次ぐ10位の名古屋大学の実就職率は、前年を1ポイント上回る35.3%。就職先上位企業は、デンソー(78人)、トヨタ自動車(40人)、三菱電機(30人)だ。理工系学部の定員が多い国立総合大は、工科系大学と同様、大手製造業の就職者の多さが有名企業の実就職率を底上げしている。14位の京都大学や21位の神戸大学、22位の東北大学も前年の実就職率を上回った。
大学生全体の就活環境は今年も好調だが、今後、文系学部の就職はAIの発達の影響を受ける可能性がある。男女を問わず事務系職種の人気は高い。そうした仕事がAIにとって変わられるということは、文系学生のキャリア形成に大きな影響を与えるだろう。学生個人個人が今後の変化にアンテナを張るとともに、個々の学生のキャリア観を養成する大学のキャリアセンターの役割も大きくなりそうだ。
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