「イニエスタ効果」は集客増だけでも劇的だ 公表データで読み解く年俸30億円の損得勘定

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入場料収入も増えるが…

第2の収入源である入場料収入も確実に伸びるものの、本拠地・ノエビアスタジアム神戸の収容人数は3万0132人であるため、入場者数の増加には限界がある。

2017年の入場料収入は5億1400万円だったが、仮にイニエスタ加入後の入場者数4割増ペースを来年1シーズン通して維持できたとしても、単純計算で入場料収入は2億円アップ程度にとどまる。大きくここを伸ばすには、入場料自体を上げる必要があるだろう。

ヴィッセル神戸の入場者数はJ1全18クラブ中10位だが、入場料収入は15位(2017年)。1人あたり入場料収入は1655円と全J1クラブ平均の同2504円を大きく下回り、最下位となっている。

入場料については、販売状況に応じてチケット価格が変動する「ダイナミックプライシング」を7月から採用。需要が大きい試合では価格を引き上げ、反対に需要が小さい試合では価格引き下げて購買を促す仕組みになっている。

同じく楽天傘下の東北楽天ゴールデンイーグルスは2017年からこの販売方法を導入。ダイナミックプライシング導入前の2016年はスタジアムの稼働率が87%だったところ、導入後の2017年は97%、今年は8月現在で93%に達しているという。

収益構造を強化しクラブ経営を健全化することで、さらなるスター選手獲得の土台が整えば、Jリーグの盛り上がりは一層増すこととなる。ヴィッセル神戸の比類なきチャレンジは成功を収めることができるのか。試合結果同様、今後の経営戦略からも目が離せない。

田嶌 ななみ 東洋経済 記者

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たじま ななみ / Nanami Tajima

2013年、東洋経済入社。食品業界・電機業界の担当記者を経て、2017年10月より東洋経済オンライン編集部所属。

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