「社会人は公務員試験に不利」という俗説の嘘 公務員試験にも「親」の影響が及んできた

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結論をいえば、これはウソです。最近は、採用側がさまざまなバックボーンを持った人材を求めるようになってきました。社会人経験者を対象とした試験もすごく増えました。また、年齢制限を満たしていれば、社会人であっても新卒の学生と同じ試験に挑むことができます。試験に合格する人数については、やはり学生のほうが多いですが、合格率を見ると社会人のほうが高いのではないかと思います。また、「結局受からなくてあきらめました……」というケースも、圧倒的に学生のほうが多いと思います。

なぜ社会人は学生よりも合格可能性が高いのでしょう。それは、社会人は時間の使い方にシビアで、責任をもって勉強に取り組む傾向にあるからだと思います。もう後がないことを知っているとも言えるでしょう。人は不思議なもので、追い込まれないと頑張ろうとしません。崖っぷちに立たされていることを認識したときに、初めて本気になれるのです。そういった意味では、「焦り」と「頑張り」は紙一重です。

もちろん、仕事を続けながら勉強をしている社会人は、あまり多くの時間を勉強に割くことはできません。しかし、時間の使い方を工夫することでその障害を乗り越えることができます。また、私が予備校などで指導していると、こちらがアドバイスしたことを、忠実に守って最後までやり通せる点が社会人の強みだと思います。ですから、ちゃんとしたアドバイザーがいれば、トントンと合格までたどり着くことができます。

しかも、仕事をしている社会人の場合は、面接については学生よりも優位性があります。民間企業の面接を一度経験しているというのはアドバンテージになりますし、仕事でさまざまな人とコミュニケーションを取る機会も多いはずだからです。公務員を目指す社会人は、「なぜ民間企業を辞めて公務員を目指すのか」、あるいは「自分の経験をどのように公務員として生かしていけるのか」という点に対する明確な回答を用意しておけば、面接ではそれほど苦労することはないと思います。

公務員の家庭で育った子どもが公務員を目指す?

「公務員を目指す子の親は公務員が多い」という話もよく耳にします。これもウソです。

まず、公務員の家庭で育った子どもが必ず公務員を目指すかというと、そんなことはありません。ただ、「公務員になろうと思ったきっかけは親からの勧め」というケースは圧倒的に多いため、親が公務員であれば、その勧めにより子どもも一度は公務員を就職先として考えるはずです(私もそうでした)。そういった意味で、公務員を目指す人の親が公務員であるケースは少なくはありません。

しかし、そもそも日本の就業者全体に占める公務員の割合が1割に満たないということを考えると、受験者全体で見たときに、親が公務員である割合はそこまで高いとは思えません。私がこれまで予備校や学内講座で指導してきた学生について考えても、親が公務員である割合は、多くても2〜3割程度だと思います。ですから、公務員を目指す子の親の7〜8割は公務員ではないということです。

『わが子に公務員をすすめたい親の本 (就活生の親がやるべきこと、やってはいけないこと)』(実務教育出版)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

ただ、地方の大学に行くと、公務員を目指す学生の親が公務員だという人の割合が高いように感じます。また、男子学生よりも女子学生の場合に、親が公務員である確率が高くなるようです。これは、親が公務員の場合、特に女性にとって良好な職場環境であることを自らの目で見ているため、子どもに公務員を強く勧めるケースが多いのではないかと思います。

いずれにせよ、親自身の職業はまったく関係ありません。それよりも、親が公務員についてちゃんとした知識を持っておくことが重要です。親が公務員であれば、公務員試験の情報も入りやすいため、アドバンテージになりえます。逆にいえば、自営業や民間企業勤務でも、しっかり情報を集めれば問題ありません。

寺本 康之 公務員試験予備校講師

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てらもと やすゆき / Yasuyuki Teramoto

全国各地の大学生協講座、東京法経学院、公務員試験予備校EYEなどで講師を務める。法律系科目、行政系科目、論文対策、面接対策などを幅広く担当。『公務員試験 受験ジャーナル』(実務教育出版)にも多数の記事を執筆している。著書に『寺本康之のザ・ベストプラス』(憲法、行政法、民法Ⅰ・Ⅱ)、『寺本康之の小論文バイブル』(いずれもエクシア出版)。市川うららFM「お笑い芸人ぶそんのラジオ100%」にも出演中。

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