世界の「土」はたったの12種類に分類できる 本当にいい土はどこにあるのか?

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土に近代科学のメス(スコップ)が入るようになったのは、「土壌学の父」ドクチャエフ(ロシア)が活躍した150年前のことだ。彼の少し前を生きたチャールズ・ダーウィンが生物の進化論を打ち立てたことに触発されたという。

「土壌の材料となる岩石(地質)や地形、気候、生物、時間という5つの環境条件によって、土も変化する」ことを発見した。穴掘り名人たちが世界中の土壌を調査し、類似する土壌を大胆にまとめていくと、世界の土はたったの12種類になった。農業利用のためではあるが、ずいぶん大胆に分けたものだ。

もちろん、細かく見ると、同じ土は1つとしてない。それはヒトと同じだ。それでも、ある程度似た土はある。たとえば、ウクライナのチェルノーゼム、北米のプレーリー土、中国東北部の黒土、南米のパンパ土は違う言語や地域名を背負っているが、土そのものはとても似ている。乾燥した草原に発達する肥沃な黒い土だ。

小麦のタネをまけば、穀倉地帯となる。肥料のやり方も水やり(灌漑<かんがい>)の方法も似ている。これをひとくくりにして名前を付けて管理するのが土の分類である。

12種類の土の違いは何か

12の土には小難しい名前があるが、ここでは色で大まかに分けると、黒い土が3つ、赤い土が1つ、黄色い土が1つ、白い土が2つ、茶色い土が1つだ。残りの4種類の土は土の色と関係なく、凍った土、水浸しの土、乾いた土、そして何の特徴もない“のっぺらぼう”な土だ。

『土 地球最後のナゾ 100憶人を養う土壌を求めて』(光文社新書)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

世界で最も肥沃な土として名高いチェルノーゼムなら、知っている人もいるかもしれない。あとは、よくわからない。園芸店に並ぶ腐葉土や鹿沼土はどこにいったのか? 12種類の土の違いは何か? どうして違う土が生まれたのか? 地理の教科書を読んでも、よくわからなかった。

実はまだわかっていないことが多いのだ。

すでにわかっている重要なことは、「肥沃な土」という名前の土はなく、12種類のどこかに散らばっているということだ。まずは自分の目で実物を見て、12種類の土を知るしかない。大学4年生になっていた私が選んだのは、土壌学研究室。

ようやく肥沃な土を探す旅が始まろうとしていた。

藤井 一至 土の研究者

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ふじい かずみち / Kazumichi Fujii

国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所主任研究員。1981年富山県生まれ。京都大学農学研究科博士課程修了。博士(農学)。京都大学研究員、日本学術振興会特別研究員を経て、現職。カナダ極北の永久凍土からインドネシアの熱帯雨林までスコップ片手に世界各地、日本の津々浦々を飛び回り、土の成り立ちと持続的な利用方法を研究している。第1回日本生態学会奨励賞(鈴木賞)、第33回日本土壌肥料学会奨励賞、第15回日本農学進歩賞受賞。著書に『大地の五億年 せめぎあう土と生き物たち』(山と溪谷社)など。

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